脂肪の役割を知って脂質異常症を賢く予防する方法をご紹介

 

脂質異常症とは、血中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が増加して起こる病気の事です。

以前は高脂血症と呼ばれていました。

 

脂質の役割や脂質異常症を知って、食事と運動でコントロールする方法を管理栄養士、運動指導士の観点からお話いたします。

 

脂質異常症ってどんな病気?

血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪などの脂質が異常に増加した症状を脂質異常症といいます。また、善玉コレステロールが極端に少なくなった状態も脂質異常症です。

人間の身体は食事から取り入れた栄養を材料として、肝臓で中性脂肪が合成されます。中性脂肪は血液によって全身に運ばれ、重要なエネルギー源となります。

しかし、カロリーを摂りすぎると余ったものは皮下脂肪として蓄えられます。血液中の中性脂肪が過剰になると糖や脂肪の代謝がうまくいかなくなり、血栓が形成されやすくなります。

血液がドロドロの状態になると動脈硬化が進行し、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こしてしまうきっかけになるでしょう。

脂質異常症は進行すると生活習慣病を悪化させると共に脳や腎臓にも重篤な合併症をきたす事が知られています。しかし、食べ物の摂り方で中性脂肪は低下しますので、食事と運動でしっかりと管理して行きましょう。

 

脂肪の役割を正しく知ろう

油をとると太るのではないの? と敬遠されがちの脂肪ですが、私たちの身体の中でどんな働きをしているのでしょうか? 

脂肪の役割を正しく理解をしておきましょう。

脂質は3大栄養素の中の一つで、一般的に中性脂肪、コレステロール、脂肪酸、リン脂質の4種類に分類されます

 

脂質は1gで9キロカロリーのエネルギーを生み出します。そのため1gで4キロカロリーを生み出す炭水化物よりも効率の良いエネルギー源となります。

また、私たちの身体は60兆個の細胞が集まってできていますが、その細胞1つ1つを取り巻く細胞膜の成分が脂質なのです。

目、のど、鼻などの粘膜の健康を保ち、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を助ける役割も果たしている、すごい栄養素なのです。

逆に、ダイエットと思って脂質を極端に減らすと肌が乾燥し、髪の毛が傷みやすくなるなど、美容にも悪影響がある事をしっかりと理解しておきましょう。

 

コレステロールと中性脂肪

ここで、脂質異常症の検査項目であるコレステロールと中性脂肪の違いをお話していきます。

 

【コレステロール】

コレステロールはLDL(悪玉)コレステロールとHDL(善玉)コレステロールの二種類があります

悪玉コレステロールは各細胞にコレステロールを運ぶ役割をし、動脈硬化を促進します。増えると狭心症や心筋梗塞の原因となるため注意が必要です。男性の場合は肥満が原因の事が多く、女性は閉経によることが多いです。

 

善玉コレステロールは身体の余分なコレステロールを肝臓に運ぶ役割をし、動脈硬化を防ぎます。

 

 

【中性脂肪】

中性脂肪は「体内にエネルギーを貯蔵する」役割を果たします。しかし、エネルギーに使われなかった中性脂肪は肝臓や脂肪組織、皮下脂肪、血中に蓄えられるため、生活習慣病のリスクを高めます。

 

脂質異常症の判断基準は下記のように分類されます。

  • LDLコレステロール血症(LDLコレステロールが140mg/L以上)
  • HDLコレステロール血症(HDLコレステロールが40mg/dL以下)
  • 高トリグリセライド血症(中性脂肪が150mg/dL以上)

 

 

脂質異常症予防のための食べ方6つのコツ

重大な疾患を引き起こす前に、脂質異常症を予防するための食べ方のコツを知り、実践しましょう。特に①と②は基本になります。

 

①高カロリー&高脂肪食を食べ過ぎていないかチェックする

脂質異常症の人は食べ過ぎの傾向があります

夕飯の食べ過ぎ、洋菓子や乳製品の摂りすぎ、飲酒が原因としてあげられています。週に1~2回は休肝日を設けるようにしましょう。

 

日頃の習慣になっている食材にも注意が必要です。パンに塗るマーガリンやバター、サラダにかけるドレッシングやマヨネーズの量を見直してみましょう。特に市販のドレッシングは添加物や人工甘味料も多いので、オリーブオイルと塩で簡単に手作りする方法もあります。

 

②油の種類を正しく知って見直す

三大栄養素である脂質はエネルギーを生み出し、細胞膜や血液の材料となります

 

油には種類があり、炒め物や揚げ物でよく使われているn-6系のサラダ油を現代人は摂りすぎている傾向にあります。体に必要な必須脂肪酸ですが、n6系の油は太りやすく痩せにくい傾向があるため、多く摂取する期間が長くなってしまうと生活習慣病を始めアレルギー疾患、がん、動脈硬化へと発症していく事になります。

【普段使いに利用したい油】

外食時に油の種類を選ぶ事は難しいですが、自宅での食事では酸化しにくいオリーブ油や米油を選びましょう。

オリーブオイルを使う地中海地方では、ほかの欧米諸国に比べて心疾患による死亡率が低い事がわかっています。

油を選ぶ時のポイントは、長期間使う事で油が酸化しやすくなりますので大容量ではなく小さい物を選びましょう。

 

③魚を食べる頻度を増やす

他の生活習慣病対策同様、魚に含まれる油の力を利用しましょう。お酒を飲む方はさらに恩恵を受ける事ができます。お酒を飲む前に、お刺身やシメ鯖を食べるようにしましょう。

魚油に含まれるEPAは中性脂肪を減らすだけでなく、動脈硬化の進行予防に有効な様々な作用があります。

EPAの作用を以下にまとめました。

・中性脂肪を低下させる

・悪玉コレステロールを低下させる

・血液を固まりにくくして血流を良くする

・血管の弾力性を保つ

EPAの上手な摂り方は、できるだけ刺身で食べる事です。またはホイル焼きなどで油を落とさない工夫をしましょう。あら汁なども良いですね。

 

④コレステロールの多い食品を控える

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」においてコレステロールの目標量は設定されていません。目標量を定めるにあたっての十分な科学的根拠がないため、目標量の設定はなくなり、現在に至っています。

卵によるコレステロールの上昇は心配ないという研究結果もありますが、何にせよ食べ過ぎは身体にとって悪影響です。卵は1日1個~2個に留めましょう。

また、コレステロールの観点よりも飽和脂肪酸が多い事でLDLコレステロール値の増加が心配です。何気なく習慣になってしまっている食材にも注意しましょう。

その他に、コレステロールの多い食品を下記にまとめましたのでぜひ参考にしてくだいね。

・マヨネーズ

・魚卵

・肉の脂身

・バター

・チーズ

 

⑤食物繊維の多い食品を積極的にとる

食物繊維にはコレステロールの吸収を抑え、体外への排出を促す働きがあります。

余分な栄養を吸着して排出させる働きがあるのは「水溶性食物繊維」という種類です。日々の食事やレシピに水溶性食物繊維である昆布、わかめ、ひじきなどを増やしましょう。

また、不溶性食物繊維である「リグニン」にも、コレステロールを調整する作用があり、腸内の善玉菌を増やす働きが高いのも特徴です。主な食品は、いちご、なし、豆類、ココアなどです。

 

⑥抗酸化食品と緑黄色野菜を意識してとる

LDLコレステロールが酸化する事により、動脈硬化が促進されます。

抗酸化食品はコレステロールの酸化を防ぐ作用があります。抗酸化食品である旬の果物や野菜を選んで食卓をカラフルにしましょう。

特に、βカロテンはLDLコレステロールによって血管が閉塞されるのを防ぐ効果があると言われています。

【βカロテンを含む主な食品】

・モロヘイヤ

・ほうれんそう

・にら

・カボチャ

・にんじん

・春菊

など

 

脂質異常症予防のレシピ

脂質異常症予防のレシピにおすすめなのが、 キノコのあんかけ豆腐ハンバーグ です。

 

材料(2人前) 

〈ハンバーグ〉

鶏ひき肉  240

木綿豆腐  120

玉ねぎ   1/2

おろし生姜 2g

醤油    小さじ1

みりん   小さじ1

塩     ひとつまみ(玉ねぎ用)

      2g(ハンバーグ用)

米油    大さじ1

 

〈きのこあん〉

きのこミックス 50

(えのき、しめじ、マイタケ)

出汁 200ml

濃い口醤油 大さじ1

みりん   大さじ1

水溶き片栗粉 粉10

       水10ml

 

作り方

  • 玉ねぎはみじん切りにし、塩ひとつまみを加えてあめ色になるまで炒める
  • ひき肉と水切りした豆腐を合わせ、生姜、塩、しょうゆ、みりんを入れてしっかりと

こねて冷蔵庫で30分寝かせた後、空気を抜きながら形成する

  • 中火のフライパンに油を敷き、ハンバーグの両面に焼き色をつける
  • 蓋をして10分蒸し焼きにする
  • 焼きあがったら竹串などで刺して中まで火が通っている事を確認し、盛り付ける

 

〈きのこあん〉

  • 鍋に出汁と醤油、みりんを入れて強火で沸かす
  • 沸いた所にキノコを入れ、弱火にして2~3分煮る
  • 水溶き片栗粉を加えてとろみがついたら火を止める

※準備 豆腐はしっかりと水切りしておく

 

☆栄養ポイント☆

豆腐に含まれるリノール酸には善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす働きがあります。

また、キノコに含まれる食物繊維はコレステロールや脂肪の吸収を抑え、体外に排出する効果も期待できます。

 

対策に効果のある運動

脂質異常症の原因の多くは「高カロリー・高脂肪食」に加え、「運動不足」と

言われています。食事の改善に運動も取り入れて行きましょう。

大きな筋肉を動かす有酸素運動は、血中脂質に非常に良い影響を及ぼします。善玉コレステロールを増加させ、中性脂肪を減少させる効果が期待でき、高血圧や糖尿病の予防、ストレスの解消にも役立ちます。

最初は10分から30分程度、ウォーキングや自転車など、会話ができる位の強度で始めましょう。少なくても週に3回以上、1回当たり30分以上の活動が望ましいです。

ゴルフや筋力トレーニングのような、息をこらえて力むような運動は無酸素運動と呼ばれ、脂質異常症の運動療法には適していません。

また、早朝の空腹時は交感神経が過度に緊張している事があるので、心筋梗塞、不整脈、脳卒中の原因となる事があります。運動前には必ずご飯を食べるようにしましょう。

 

まとめ

脂質異常症は、日々の生じ両方の工夫や運動によって予防・改善することが可能です。こちらの記事を参考に毎日の生活習慣からできそうな事を取り入れて、脂質異常症を予防していきましょう。