ヘルスリテラシーの向上は生産性の向上!正しい情報を入手できるようになるには?

「健康」は誰もが気になることです。健康のために運動をしたり、食事を気にしたり、と様々な取り組みをしている人も多いことでしょう。

 テレビやインターネットでは健康にまつわるトピックスを取り上げていることも多く、ありとあらゆる情報が手に入ります。しかし厄介なことに、目に入る全ての情報が正しいとは限りません。

そこで今回は、正しく健康について理解し、本当に健康的な毎日を送るために、ヘルスリテラシーについて理解を深めていきましょう。

 

ヘルスリテラシーとは

ヘルスリテラシーとは「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力」だと定義されています。

参考

東京都医師会「ヘルスリテラシー | 公益社団法人 東京都医師会」

https://www.tokyo.med.or.jp/

 

一生涯を通じて、健康的に生活をするため、生活の質を正しく上げる知識をインプットとアウトプットできることが、ヘルスリテラシーの向上だと考えてください。

ここで、繰り返し「正しく」と使われていることにお気付きのことでしょう。

インターネットやSNSで幅広い情報を入手できる反面、根拠のない健康法や全くのデマを掴んでしまう可能性は少なくありません。

ヘルスリテラシーとは、どういった情報を入手し、咀嚼して自分のものにできるのかが問われることでもあるのです。

ではそのヘルスリテラシーの種類についてご説明していきます。

機能的ヘルスリテラシー

機能的ヘルスリテラシーとは、日常的な情報を理解するための基本能力です。たとえば、医師の説明を理解する、医薬品の説明が書かれたパンフレットが理解できる、といった「日常の理解力」を基に、情報を理解する力のことを機能的ヘルスリテラシーと呼びます。

機能的ヘルスリテラシーが備わっていないと、日常における健康リスクや、保険医療の活用ができないといったことになり得ます

相互作用的ヘルスリテラシー

「相互」とは、お互いの方向から働きがけがあることです。情報を入手した人がその情報を活用できる能力を持ち合すことを指します。

入手した情報を元に健康的に有効な行動を起こすコミュニケーションスキルを有している状態です。 

簡単な例をあげるとすると、疾患に良いと聞いた病院を自分で調べて予約し受診する、といった行動が該当となります。

批判的ヘルスリテラシー

「批判」ですから全てを鵜呑みにするということではありません。

仕入れた情報を批判的に分析し、理解し活用するまでの能力を有することが、批判的ヘルスリテラシーです。

たとえば、流行している疾患に対して自分なりに調べ、分析し、情報発信するまでが批判的ヘルスリテラシーの範囲となります。

そこで問題となるのが、入手した情報が「正しい情報かどうか」ということです。

 

情報の伝達はインターネットやSNSによって簡単になりました。これまでは、提供される情報をインプットするだけで終わっていた専門知識を持たない人であっても、アウトプットが簡単にできる場がすぐそこにあるのです

 

ヘルスリテラシーを向上させるには、個人の情報リテラシーがまず向上していることが大前提となります。個人の情報リテラシーが欠如したままに情報発信することがSNSでは横行していると言わざるを得ません。

 

ヘルスリテラシーを上げるには?

ヘルスリテラシーを向上させるには、1人ひとりが「正しい情報を得る」意識を高める必要があります。

では、どうすればデマやフェイクの情報に踊らされずにリテラシーを向上できるのか、情報を得る際に気をつけるべきことを心得ておきましょう。

QOLを理解しよう

QOLとは、Quality of Lifeの頭文字を取ったもので「生活の質」を意味します。肉体や精神、社会や経済などあらゆる面で生きていく「質」を高めると、生きていく上で満足度が上がるということです。

たとえば、何をどう食べるか、食事の選択もQOLを上げる要因になりますし、また仕事においてワークライフバランスを整えることもQOLを上げる背景となります。

ワークライフバランスについてはこちらの記事をお読みください

 https://qollifesupport-service.com/blog/20221124/

 

QOLを正しく理解すると、健康を蔑ろにすることが軽減されるはずです。いかに自分らしく生きるか、健康寿命を延ばすかはQOLの理解と共にあると言えます。

情報のソースを確かめる

ヘルスリテラシーを向上させるには、健康や医療に関する情報が「正しいかどうか」を判断できる能力が必要です。

入手した情報がどこから出てきているのか、いつの時点での情報かなど、そのソースが信頼できるかどうかを見極める力を持ちましょう。

そのためには、情報を見たらまず「本当かな?」と立ち止まることが大切です。

 

因果関係を考察する、情報の提供元を確認する、情報に偏りがないかを調べるなどをして、仕入れる情報の信憑性をまずは疑う癖をつけていきましょう

商業目的ではないかを確かめる

質の悪い情報の配信元が商業目的であることは少なくありません。

過度な誇張やセンセーショナルな見出しなど、人の気を上手く引く表現には気を付けることが、リテラシーを上げる助けになります。

 

たとえば「大人気」「8割が使用」「大学教授推薦」などといった言葉は、心理的に「情報は正しい」と捉える作用が指摘できます

また、不安や恐怖といった感情を煽るように健康に関する情報が流れてくることもあります。その先にはサプリメントの広告や、怪しい健康グッズなどに辿り着くことがあります。

商業目的の情報ではないかどうかを見極め、正しい必要な情報を得るよう心がけましょう。

 

ヘルスリテラシーの向上が企業にとっても大切な理由

3種類のヘルスリテラシーで最も高度な批判的ヘルスリテラシーは、従来、医療や薬学、解剖学といった専門知識を持ち合わせた人のみが担っていた分野です。ところがSNSの出現によって、簡単に謝った情報をインプット・アウトプット共にできるようになりました

膨大に溢れる情報の中から、本当に正しい情報を得ることがとても大切です

日本人のヘルスリテラシーが低い理由

厚生労働省の発表によると、日本人の平均寿命は男性で81.47歳、女性で87.57歳と高齢になっています。

参考

厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life20/dl/life18-02.pdf

 

この長い人生において、いかに「健康寿命」を延ばすかは全ての人にとって課題でしょう。

ところが、日本人のヘルスリテラシーは各国に比べて低いと言われているのです。

その1つの理由として「時間がない」があげられていることに驚くでしょうか、それとも納得するでしょうか。

内閣府が行った「がん対策に関する世論調査」(平成29年)によると、がん検診を受けない理由について「受ける時間がないから」が3割以上で最も多い回答となっていました。

参考

内閣府「がん対策に関する世論調査」

https://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-gantaisaku/gairyaku.pdf

 

実は、日々の体を作る食事に対しても、日本人の意識の低下が昨今指摘されているのです

世界に誇るヘルシーフードである「和食」の本拠地、日本において、日本人の食意識(フードリテラシー)は低いと指摘がされています。

 

東京大学の研究グループが行った内容に基づくと、食の安全性についての意識は、働き盛りと言われる若年・中年において特に低いとされています。若年・中年の人は食に対して「入手しやすさ・便利さ・快適さ」といったコンビニエントな要素が重要視されているとのことです。

参考

東京大学「食に関する価値観、知識、技術と性別・年齢との関連」

https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400187851.pdf

 

以上の結果より、日本人のヘルスリテラシーが低い理由には、残念ながら日本的な働き方が影響していると言わざるを得ません。

長時間労働や、休みを取る罪悪感から、ヘルスリテラシーが下がっているのであれば、企業として働き方や環境を改善する必要が見出されてきます

ヘルスリテラシーの向上に健康経営はMUST

健康経営とは、従業員の心身の健康維持を促進し、健康管理的視点から「投資」と考え、生産性と企業価値とを上げる戦略です。

健康経営についてはこちらをお読みください

https://www.lifesupport-service.com/blog/20220922/

少子高齢化において慢性化する人手不足の解消は、従業員の長期定着が必須となってきます。そのためには、従業員が心身共に健康であること、そして健康維持ができる環境を提供する必要があるのです。

「時間がない」を理由に従業員が健康を蔑ろにしないよう、定期健康診断の受診はもちろん、体調不良時に休暇を取れる適切な雰囲気作りや福利厚生などの制度の充実を率先して行っていきましょう

企業のヘルスリテラシーを向上させるための具体的な施策・事例

従業員のヘルスリテラシーを向上させるには、個人の意思決定のみに頼るのではなく、企業としてサポートする体制を整えることが大切です。

 では、具体的にどのようにサポートすれば効果的なのか、解説していきますのでぜひ参考に取り組んでみてください。

 

従業員のヘルスリテラシーレベルを知る

まずは従業員のヘルスリテラシーに対する現状把握からはじめましょう。

アンケートなどを用いて、健康への関心度や、ヘルスリテラシーに対する理解度などを調査します。ストレスチェックも、健康状態を把握するのによい参考資料になるでしょう。

ヘルスリテラシーのレベルを知る重要性は、ヘルスリテラシーを向上させるために必須です。というのも、健康に対する知識や関心がゼロに近い従業員に対して「ヘルスリテラシー向上のセミナーを開催する」と場を設けても興味を持たない可能性があります。

逆に、自ら健康促進のために高い意識がある従業員に対して「健康診断の重要性」を伝えたところで「既に知っている知識」になってしまいます。

この格差を無くすために、まずは従業員のヘルスリテラシーレベルを把握しておきましょう。

 

自らの健康状態と向き合う環境作りをする

健康に対する情報を伝えたとしても、自分自身の健康状態に直結した内容でなければヘルスリテラシーの向上にはつながりません。

たとえば、非喫煙者にタバコの有害性をレクチャーするのは、他にもっと伝えるべきことがあるだろう、と思いますよね。

従業員が自らの健康状態と向き合える内容から取り掛かることができるように、それぞれに健康の課題を把握してもらうことが大切です。

たとえば、健康診断の結果に基づいた産業医との面談や、ストレスチェックの結果に基づいたセミナーの開催など、健康の改善が表れやすい内容から提供すると良いでしょう。

 

意思決定とリテラシー

自らの課題を認識し、解決に導くには有益な情報を収集してアイデアを割り出す必要があります。このプロセスは「創造的意思決定」と呼ばれ、目標達成において重要な行動です。

意思決定をする本人が、自分の健康について積極的に考えることで「より良い選択をする」行動を常態化させます。すなわち、正しい情報を入手して解決策を見つけるので、リテラシーを向上させる手段となるのです。

  

セミナーを実施する

心身の健康に理解を促進するセミナーを実施するのも、ヘルスリテラシーを高める具体策です。とくに、血圧や糖尿病、コレステロールやストレスに対するセミナーは、自分自身の健康状態に直結する従業員にとって興味を引きやすい内容になるはずです。

日本人の3人に1人は血圧が高いと言われるほど、高血圧は身近な存在です。恐らく、あなたご自身でなくてもあなたの周りにも降圧剤を服用している人も多いことでしょう。 

高血圧にならないための食事のとり方や運動、リラックスをする方法などのコンテンツのセミナーを開催できれば、該当の従業員だけでなくその家族の健康をも見守ることが可能です。

 

セミナーを受けた従業員が、家族や大切な人に健康情報を伝えることで、またさらにヘルスリテラシーを高めることができる相乗効果も期待できます。

高血圧の改善については、こちらの記事もご参考ください
今日からできる高血圧改善法! 食事や運動療法を賢く取り入れる方法をご紹介

 

ヘルスリテラシーの高い社員を増やす

ヘルスリテラシーの高い社員が、周囲に良い影響を与えてヘルスリテラシーを底上げするのも効果的です。

とくに、それまでヘルスリテラシーに縁がなさそうであった従業員が、健康体になればその努力に影響されて周囲が追随していく可能性は高いでしょう。ヘビースモーカーだった人がタバコをやめたり、ベルトが苦しそうなお腹をしていた人がスリム体形になったりしたら「自分もできるはず!」とやる気がでるはずです。

こうした社内でのインフルエンサー作りは、実体験が身近にあるので変化を促進しやすくなります。

 

健康をサポートする環境作りをする

どんな行動であっても、1人で立ち向かっていると心は折れやすくなります。ヘルスリテラシーを高めてせっかく糖分を控える決意をしたのに、3日で続かなくなってしまっては意味がありません。

従業員がヘルスリテラシーを高めて健康的な日常を送ることができるように、企業として環境作りを整えましょう。

 

孤独感がないように環境を整える

自分1人だけが頑張っている…それが自分自身の健康のためとは言え、とても孤独を感じやすくなるものです。たとえば、禁煙を頑張るなら2人1組で取り組めるような仕組みにしたり、部署単位で健康にまつわる目標を掲げさせたりするなど、一緒に頑張る環境を作ってみましょう。皆が参加できる状態は、孤独感を和らげる効果的な方法です。

福利厚生に盛り込む

健康に関するサービスを福利厚生に盛り込むのも良いでしょう。

たとえば、ランチをコンビニ弁当で済ます方は少なくありません。しかしコンビニで選ぶと、どうしても自分の好きな「味の濃い食事」「脂質の多い食事」といったヘルシーではない食事を選びがちです。だからといって栄養バランスの取れたお弁当の用意は時間がかかります。定食を食べにでる時間もないという従業員もいることでしょう。

そういった健康的な食事がとりにくい環境であれば、オフィス内にお惣菜やサラダを買える販売サービスを提供することも福利厚生の案として考えることができます。

 健康促進を個人に任せるのではなく、企業が率先して環境を整えることで、食生活や日常の見直しが進み、ヘルスリテラシーの向上へと繋がるのです。

 

ヘルスリテラシーの向上は企業の業績アップにもつながる!

正確で信頼できる健康関連の情報を入手できるようになれば、今度はアウトプットして周囲に良い影響を与えることができます。

企業が従業員向けにヘルスリテラシーを向上させる教育・研修の機会を与えるのも良いでしょう。

1人ひとりがヘルスリテラシーを向上させれば、より効率的に従業員の健康促進ができ、結果的に生産性の向上へと繋がるのです。

 

弊社では企業様の健康経営を積極的にサポートしています。

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