
歳を重ねていくうちに自分の身体の変化に気がつく事があっても、まさか自分ががんにかかる事は無いと思っていませんか?
がんは高齢になってから発症するものと思っているかもしれませんが、子宮頸がんは20代から発症してもおかしくないがんです。子宮頸がんを予防するには定期的に子宮頸がん検診を受診する事が大切です。どんな検査なのか、痛みはあるのかなど、不安に思う方も多いと思います。
今回のコラムでは子宮頸がん検診の方法や、子宮頸がんが疑われた時の病院の選び方についてお話します。
子宮頸がんとはどんながん?
子宮頸がんについて説明します。
子宮頸がんの特徴
子宮の構造は上部の袋状の「子宮体部」と子宮の入口にあたる「子宮頸部」に分かれています。子宮頸部は子宮体部と膣の間にあり、子宮体部に近い筒状の部分と膣の中に突き出した部分とに分かれています。
子宮頸がんは言葉の通り子宮頸部(外子宮口のあたり)にできるがんの事で、通常一定の時間をかけてゆっくりと増殖し、感染してからがん化するまでは5年程度かかるとも言われています。
ますがんが発見される前段階として、子宮頸部の組織にがんに進行する可能性のある細胞が増えていきます。この前がん病変は子宮頸部異形成と呼ばれますが、自治体などで定期的に子宮頸がん検診を受ければがんになる前の前がん病変段階で見つける事が可能です。
現在日本では毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡しているため、決して他人事ではありません。子宮体がんはエストロゲンの分泌が左右するため発症は60代と高めなのに対し、子宮頸がんは性交渉により感染するHPVが関与するため比較的若い世代に多く、20代でもかかるがんという特徴があります。子宮頸がんになったら妊娠や出産は不可能なのかと不安になる事も大いにあるかと思いますが、早期治療をする事で子宮を摘出する事が無くなる可能性が高まります。
子宮頸がんになる原因
子宮頸がん発症の主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染とされています。HPVは人から人へと感染するウイルスの一つで、主に性交渉によって感染するウイルスです。女性だけでなく男性も感染する可能性があります。HPVはごくありふれたウイルスであり、性交経験のある女性の50〜80%が生涯のうちに1度は感染すると言われています。
しかし、ほとんどの場合は一過性の感染のため免疫機能により2年以内に消滅すると言われています。ではなぜHPVが子宮頸がんの原因になるのかと言うと、HPVには200種類以上の種類がありますが、がん化を起こす特定のハイリスク型(16型、18型が多い)に感染した場合には持続感染する事で子宮頸がんのリスクが大きくなる事がわかっています。
子宮頸がんはがんの中で唯一予防ワクチンが存在します。しかし、子宮頸がんワクチンも効果も100%では無いため、定期的にがん検診を受ける必要があります。
子宮頸がんの主な症状
子宮頸がんの特徴として、初期症状がほとんどありません。HPVに感染しても症状がほとんど現れないウイルスのため、感染していても自分では気付かない事がほとんどです。子宮頸がんが進行すると月経中でないときに出血があったり、においを伴う膿のようなおりもの、水っぽいおりものや粘液が多く出るといった普段には見られない症状が出る事があります。
子宮頸がん検診の検査方法
子宮頸がん検診の検査方法についてお話します。子宮頸がん検診の検査の流れを確認しましょう。
子宮頸がん検診を受ける対象とタイミング
子宮頸がん検診の対象者は20歳以上の女性です。子宮頸がんは初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な検診が必要です。
厚生労働省の政策では、20歳以上となる女性は2年に1回の細胞診による検診を推奨しています。30歳以上の女性は2年に1回の細胞診に加え、5年に1回行われるHPV検査単独法という検査があります。
HPV検査とは
HPV検査は子宮頸部の細胞を採取し、HPVへの感染そのものを調べる検査です。一般的にはHPVに感染してから異形成を経て子宮頸がんの発症までは数年かかるとされていますので、HPV検査は細胞診に比べて推奨受診頻度は低めです。このHPV検査単独法を導入するには都道府県、地域医師会及び検診医療関係者の理解と協力が得られていることが要件となっており、日本のがん検診としては子宮頸部細胞診を推奨しています。
子宮頸がん検診により子宮頸がんを早期発見する事ができれば子宮の部分切除等の治療により、がんによる死亡を防ぐ事ができると言われています。検査が怖い、恥ずかしい、痛いのではないかという思いもあるかもしれませんが、検査を受けるメリットは十分にあると言えます。
例外的に1年に1回のがん検診が有効な方
日本では2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されていますが、これ以上頻回に受けても子宮頸がんの予防効果は無いとされています。
しかし、とても有効な例外もあります。
それは妊娠、出産を希望する場合です。妊娠中に子宮頸がんが発見された場合、治療が困難になるばかりか、治療法によってはその後に妊娠、出産にも影響を及ぼす可能性があるからです。特に子宮頸がんが進行してから発見された場合は効果を期待できる治療法が限定されてしまう可能性があります。妊娠、出産の予定がある場合は年に1回の検診を受ける事も視野に入れましょう。
問診
子宮頸がん検診は問診からスタートします。問診票に月経周期や直近の月経の様子、妊娠歴、出産歴、閉経した年齢などを記載し、診察室で医師からの質問等に答えます。
HPからダウンロードできる医療機関であれば事前に記入し持参するとスムーズに検診を進める事ができるでしょう。
視診
視診は、内診台という両足が開きやすい台に乗り、実際に子宮頸部の状態を医師が見て確認します。子宮頸部は見づらいためクスコ(膣鏡)という医療器具を膣に入れて子宮頸部の形状の異常がないか、色調が変わっていないかなど、子宮頸部の様子を観察します。
診察台での診察は下着を脱ぎ診察台に乗るため、着脱に時間がかからない簡単服装で受診するようにしましょう。ゆったりとしたスカートやワンピースがオススメです。
内診
内診は、婦人科で行われる最も基本的な検査です。医師は指を膣に挿入してもう一方の手でお腹を押しながら子宮の形、大きさ、位置、表面の状態などを調べていきます。緊張すると検査がしにくくなったり苦痛を感じたり時間がかかる事がありますので、無理な力を入れずリラックスして全身の力を抜くようにしましょう。
細胞診
細胞診とはブラシやヘラなどで子宮頸部を優しくこすり、細胞を採取してがん細胞がないか顕微鏡で調べる検査で20〜30秒で終了します。ほとんど痛みはなく、違和感を感じる程度です。検診は子宮膣部を綿棒などでこすって採取した細胞を染色して顕微鏡で観察し、がん細胞がないかを調べます。
検査後の出血はほとんどありませんが、当日はナプキンをあてておくと安心です。出血が続く場合は医師に連絡をしましょう。細胞診の検診結果は1ヶ月以内に出る事がほとんどです。
精密検査(コルポスコープ診、組織診)
精密検査には、コルポスコープ診と組織診があります。採取した細胞に異常が見つかった場合、コルポ診が行われます。コルポスコープ診とは、コルポスコープという筒型をしていてライトがついた拡大鏡を膣内に入れ、主に子宮頸部を拡大してで患部を観察します。10〜30倍に拡大する事が出来るので肉眼では見られない病変の発見に役立ちます(子宮頸部の粘膜の色や血管の変化など)。
コルポ診で疑わしい変化が異常が発見された場合はその場で組織を採取して組織診(病理学的検査)が行われ、それらの結果を総合して判断されます。精密検査が必要となった場合、自覚症状が無くても速やかに精密検査を受けましょう。
子宮頸がん検診でよくある疑問
生理の時は検査ができないの?と考える方が多いかと思いますが、生理の場合でも検査をする事が可能です。しかし、正しい結果が得られない可能性があります。また生理期間中の検診はできないと定められている自治体もありますので、各自治体の子宮頸がん検診の注意事項をよく読み、分からない事は窓口に質問しましょう。
子宮頸がん検診の自己負担額に関しては、市区町村による住民健診や職場での検診などによって異なりますので、各自治体のがん検診ホームページまたはがん検診窓口へお問い合わせすると安心です。子宮頸がんは早期発見すれば治りやすいがんであるため、スケジュールに組み込むのが面倒と思わず、定期的に検診を受けましょう。
子宮頸がんと診断されたら
子宮頸がんになる前の異形成には、軽度異形成から高度異形成(前がん状態)まで分類されます。軽度及び中度異形成であれば自然に治癒する事もあるため、定期的に経過を見て行く事が大切です。
子宮頸がんのステージは大きく分けると以下の4つになります。
Ⅰ期:がんが子宮頸部のみ
Ⅱ期:子宮頸部よりも広がり、膣壁の下1/3もしくは骨盤壁には到着していない
Ⅲ期:膣壁の下⅓を超えている、もしくは骨盤壁に到着している
Ⅳ期:がんが膀胱や腸の粘膜へ浸潤、または小骨盤腔
子宮頸がんの治療方法は進行具合やがんの場所に応じて変化しますが、高度異形成の場合でもレーザーで病変部を焼いたり子宮頸部の一部を切除する治療があり、これらの手術法では子宮を温存できるため術後の妊娠を望める可能性が増えてきます。ステージⅠ期でがんが小さな場合は子宮の機能を温存しながら治療が可能な場合もありますので、将来妊娠を希望する場合はその旨を主治医に伝えて最良の治療法を選択していきましょう。
子宮頸がん検診を受ける医療機関の選び方
子宮は妊娠、出産に関わる重要な臓器ですので、がんが進行してしまえば最悪の場合摘出の可能性もあります。子宮頸がんはがんの中でもとくに早期発見の重要性が高いがんと言えます。そのため、検診だけでは無く検診後異常が見つかった時にも治療を受けやすい環境作りも大切です。
通いやすい場所にある
子宮頸がん検診の結果、経過観察が必要となった場合には3ヶ月〜半年に1回程度の頻度で受診を続ける事になります。その場合、レディースクリニックは駅近など比較的立地が良く、交通手段に困らない点と診察時間が幅広い事が多いので自宅の近くであったり仕事の休憩時間や仕事帰りに通いやすいというメリットがあります。
不正出血などの自覚症状があった場合、子宮頸がんと結びつかなくても女性医師やスタッフが揃っている場合が多く、初診に向いていると言えます。子宮頸がん検診にも適しているため、医師に相談しやすいかかりつけのレディースクリニックがあると何かと安心できますね。
専門医がいる
総合病院や大学病院、がんセンターといった、がん治療に必要な設備が整っている場所には手術の実績が豊富な医師が多く在籍している可能性が高いです。在籍している医師の専門性や経歴、実施可能な治療法も確認しておくと良いでしょう。子宮頸がん検診では精密検査が必要になる場合もありますので、ひとつの病院で治療まで完結できると自身の負担も少なく済みます。
子宮頸がんの治療に精通した医師が常駐している事も多く、がんが発見されてからの治療がスムーズに行え、複数の科が連携して治療に当たるため持病がある場合にも対応してもらいやすいメリットがあります。また、病院が「がん診療連携拠点」となっているか確認しておくと尚良いでしょう。がん診療連携拠点とは、厚生労働省が質の高いがん診療を期待できる病院として認めた病院の事です。
プライバシーに配慮しているか
子宮頸がんは自分だけでなく妊娠や出産にも影響するため、女性にとってはデリケートな問題と言えます。子宮頸がんの検査は人によっては抵抗感を感じる内容も少なくありませんので、
気になる方はプライバシーに配慮した取り組みを行っている医療機関を選ぶと良いでしょう。なるべく他の人を介さずに済む完全予約制の施設や個室で検診ができるかなどの工夫をしている病院もありますので、病院のHPなどを参考に探してみましょう。
まとめ
いかがでしたか?
子宮頸がんは20歳代から30歳代後半という若い世代の方でもかかりやすいがんであり、20歳からの検診が推奨されています。更に子宮頸がんは初期には自覚症状が見られない事が多く、がんの中でもとくに早期発見の重要性が高いがんでもあります。子宮頸がんを予防する為には、自分はきっと大丈夫と思わず、女性ならば誰にでも子宮頸がんにかかる可能性があると思う事が重要です。
婦人科が初めての人は内診台に乗る事に抵抗があるかもしれませんが、性交渉の若年化により若い年齢層での発症が増えている事を覚えておきましょう。また、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスの継続的な感染が原因となって発症しますが、その感染を予防するワクチンも存在しますので、活用するのも良い手段かもしれません。子宮頸がん検診は20代と30代で受けられる内容が異なりますので、自治体ではどのような内容で行われているのか調べてみたり、医療機関を選ぶ際も、通いやすい場所にあるかなど、他人事ではなく自分事として興味を持てたら良いですね。
執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士
生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。