
シンデレラ体重という言葉を聞いた事はありますか?
シンデレラ体重とは医療用語ではなく2016年頃からSNSを中心に10代~20代の若い女性を中心に広がった言葉であり、標準と言われる体重よりも少ない体重であるのが特徴です。
シンデレラ体重になる事が「美しい」「価値がある」「綺麗な見た目」と信じ、無理な自己流ダイエットに依存してしまうのです。しかし、シンデレラ体重を目指す事は近い未来の健康問題にも直結するため、早急の対策が必要です。シンデレラ体重にまつわる現状と回避する為の食事のポイントを管理栄養士が解説します。
日本の女性の痩せは深刻
平成26年に行われた「国民・栄養調査」では、20代女性の平均摂取カロリーは終戦後よりも低い約1600㎉だったという衝撃の事実が明かになりました。身体活動レベルが「普通(Ⅱ)」の20代女性が1日でとるべきカロリー量の目安は2000㎉ですので、1日に400㎉も不足している事が分かります(約おにぎり2.2個分)。8歳~9歳の女の子のカロリー量が1700㎉ですがら、それをも下回っている計算になります。
加えて平成29年の「国民・栄養調査」では20代~50代の女性のうち、BMI<18.5以下の20代でのやせの割合が最も高い事が明らかになり、20代女性の5人に1人はやせである事が今の日本の現状である事が分かりました。これは世界から見ても異常に高い数値と言えます。
参考:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html
では、飢餓の心配のない先進国である日本でなぜこのような事態が起こるのでしょうか。
【なぜ若い女性は痩せたいのか】
若い日本人女性がシンデレラ体重を目指すようになったのはなぜでしょうか?
その理由は、インターネットやSNSで身近に感じる綺麗で細いアイドルやモデル、芸能人などの影響が大きいと考えられます。現に、80年代のアイドルと今のアイドルを比べると今のアイドルの方が細いですし、スラっと伸びた細い手足に憧れを持つ小中高生も多いでしょう。
太っているわけではないのにぽっちゃりしている事を笑われて嫌な思いをしたり、痩せていて綺麗でいなければ価値が無いという考え方に至ってしまう恐ろしさは若年化しています。最悪の場合、摂食障害へと繋がるケースも珍しくありません。シンデレラ体重を「自分の理想の見た目」であると信じているのです。
【日本人女性がやせ続ける理由】
日本人女性のやせが増えている原因は「美意識」の他にも「忙しくて食べる時間がない」などが挙げられます。
女性の社会進出が進み、働きながら家事、育児をこなす女性は少なくありません。
自分の食事時間がまともにとれない事や労働時間が長くなっている事も日本人女性のやせを引き起こす要因になっています。
やせが引き起こす将来の健康問題は深刻
やせている事がかっこいいと思う過度なダイエットをした結果、10年後、20年後に
深刻な健康問題として現れる事があります。
やせた若い女性は標準体重の若い女性に比べて特に筋肉量が少なく身体を動かす割合も
少ない事もわかってきました。筋肉の質と量の低下は将来の糖尿糖尿病や妊娠高血圧症候群の他、糖尿病のリスクも上がります。そのため1日3回の食事から適切なエネルギーと栄養素の補給をする事が重要です。
【シンデレラ体重と標準体重】
シンデレラ体重の計算方法と、適正体重(目指すべき体重)の算出方法を見てみましょう。
日本肥満学会は最も病気になりにくい医学的に根拠のある数値としてBMI22を「標準体重」としています。
特定保健指導でも18.5未満が痩せ、18.5~25が標準、25以上が肥満と評価されます。
例えば身長160㎝の人の場合
◎シンデレラ体重
【身長(m)×身長(m)×20×0.9】 ⇒ 1.6×1.6×20×0.9=46.08㎏
つまり、160㎝ならシンデレラ体重は約46㎏と算出されます。
◎標準体重
【身長(m)×身長(m)×22】 ⇒ 1.6×1.6×20×=56.32㎏
標準体重は約56㎏と算出され、シンデレラ体重に比べて10㎏もの差が生まれる事がわかります。
しかし、いきなり標準体重を目指すのは難しいと感じる方は、せめてBMI20を下回らないように体重を維持しましょう。
【シンデレラ体重がもたらす身体への危機】
若い女性がシンデレラ体重を目指す事で栄養不足を起こすと、将来的に身体に起こる健康問題は深刻です。誤ったダイエットによる栄養不足が続く事は本人だけでなく、将来生まれてくる赤ちゃんにも影響があると警鐘が鳴らされています。
①月経の異常と不妊
無理なダイエットを続ける事でエネルギーが不足して女性ホルモンの分泌に影響が生じ、月経異常が起こる事があります。
また、若い女性は月経が無い事への関心が薄く、「月経が来ない事が楽」と感じて長い間対策をしないケースも多く、この状態を長期間放置した場合将来的に排卵を起こす事が難しくなり、不妊に繋がってしまうケースもあります。
②貧血
女性は月経により毎月鉄を失うため貧血になりやすいのですが、自己流のダイエットで食事を制限する事により食事量が不足し、余計に貧血症状が加速する環境を作り出してしまいます。
貧血が悪化すると倦怠感や動悸、息切れなどの症状が現れますが、本来のダイエットの目的である「美容面」についてもシミやシワ、肌荒れを引き起こしやすくなるなどマイナス面しかありません。また、お母さんの貧血は子どもにも受け継がれてしまうので、妊娠前に貧血症状を改善しておく必要があります。
③赤ちゃんの低体重や、将来生活習慣にかかりやすくなる体質に繋がる
やせた女性が妊娠すると、2500g以下の低体重の赤ちゃんが産まれる確率が上がる事が分かっています。赤ちゃんにとって、お母さんからの栄養は命綱です。そこで妊娠中も体重を増やしたくないと考えるやせ思考のお母さんが食事量をコントロール(つわりを除く)してしまうと、赤ちゃんはなんとか少ない栄養で生き延びる為に飢餓状態になります。
その結果、産まれてから栄養を多くとり込む体質になり、将来生活習慣病にかかるリスクが上がる可能性があるのです。女性のやせ思考は本人だけでなく、未来の命にも影響が及んでしまうのです。
食べて綺麗になる健康ダイエットを目指して
20代などの痩せすぎている女性が綺麗になりたいと願うなら、食べて綺麗になる健康ダイエットを目指しましょう。
【若い女性に多い食事パターンと間違ったカロリーの考え方】
カロリー=悪い物、ダイエットの敵と考える女性は多いものです。しかし、正しくカロリーをとらないとエネルギーが不足し、冷えやむくみに繋がります。
カフェに行くと、コーヒーと洋菓子のセットがよく目につきます。
コーヒーのカフェインと洋菓子にたっぷり使われる砂糖で脳内は満足し、一時は満腹感や満足感を感じる事ができます。しかし、それをランチの代わりにするのはNGです。
カフェインの覚醒作用に加え、砂糖の甘さは血糖値を急激に上げて「満たされた」感が
ありますが、肝心の栄養素は主にエンプティーカロリー(からっぽの栄養)です。その結果、夕食までに空腹感を強く感じたり集中力が切れやすくなったりと、また甘い物やコーヒーを欲する悪循環へと繋がります。
【タンパク質が綺麗への近道】
お肉や魚は太るから食べたくない、と先入観を持つ人は多いのではでないでしょうか。
しかし、タンパク質は筋肉や骨のもとになる重要な栄養素です。
シンデレラ体重を目指した自己流の食べないダイエット法では、まず筋肉が落ちてしまい、冷えやすい身体になってしまいます。そしてタンパク質が不足すると美容の為に始めたダイエットなのにお肌の調子が悪くカサカサしたり、髪の毛がパサつく、便秘になる、イライラするなど美容部面にも精神面にも影響が出ます。
タンパク質摂取の目安として、毎食片手に乗る量のタンパク質の摂れる食事(肉、魚、卵、豆腐、豆類)を用意しましょう。
【まずは朝ごはんを食べよう!】
ダイエットの為に朝食を欠食すると、1日2食で生活する事になります。
そうすると、1日に必要なエネルギー、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの
栄養素が圧倒的に足りなくなります。
そうならない為に、朝ごはんをしっかり摂りましょう!と伝えるのは簡単な事ですが、
普段から朝ごはんを食べる習慣の無い方にはハードルが高いでしょう。
簡単にスタートできる朝ごはんは、豆乳や飲むヨーグルト、味噌汁など「タンパク質の含まれる飲み物」から初めてみるのはいかがでしょうか。
ダイエットになる朝ごはんのポイントについては、こちらのコラムに詳しくまとめています。
ダイエットするなら朝ごはんは常識!健康へのメリット・簡単メニューを紹介
まとめ
いかがでしたか?
若い女性の痩せ願望はSNSやインターネットが普及した現代では仕方のない事なのかもしれません。
しかしながら、若いうちは少々無理をしても健康で過ごせていても貧血や低体重を放置してしまうと不妊のリスクが上がり、赤ちゃんの健康をも損なう怖い未来が待っています。人生100年時代の病気のリスクを減らし、自分らしく仕事をして人生を楽しむ為にも、まずは自分の食事の内容を振り返り、BMIを測ってみましょう。
シンデレラ体重の危機は企業や大人が声を大にして啓蒙するべき問題です。シンデレラ体重を憧れとするのではなく、女性や子ども、日本の未来を脅かす「危険な体重」と認識しましょう。