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職場の健康診断でがん検診を受けることの重要性

職場の健康診断でがん検診を受けることの重要性
毎年受けている職場の健康診断(事業者健診)。
「忙しいから早く終わらせたい」「特に自覚症状もないし、ざっと済ませよう」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この健康診断の機会にぜひ意識していただきたいのが「がん検診」の受診です。
なぜ職場の健診でのがん検診が重要なのか?
職場の健康診断は、皆さんの健康状態を定期的にチェックする大切な機会です。その中でがん検診が特に重要視される理由はいくつかあります。
早期発見・早期治療のチャンス
がんは、早期に発見できればできるほど、治療の選択肢が広がり、完治の可能性も高まります。自覚症状が出てからでは進行しているケースも少なくなく、治療の負担も大きくなる傾向があります。毎年定期的に実施される職場の健診は、症状がない段階でがんのリスクを発見できる貴重な機会です。
費用負担の軽減
自費でがん検診を受けるとなると、ある程度の費用がかかります。しかし、職場の健康診断に含まれるがん検診は、会社が費用を負担してくれる場合や健康保険組合から補助が出るが多く、経済的な負担を気にせず受診できます。
手軽に受診できる
がん検診を単体で受診しようとすると、仕事や家事などで忙しく、なかなか医療機関を受診する時間が取れない方も多いでしょう。職場の健康診断であれば、会社の指示のもと、業務の一環として受診できるため、日常のスケジュールを大きく変えることなくがん検診を受けられます。
継続的な健康管理
毎年定期的に健診を受けることで、自身の健康状態の変化を継続的に把握できます。これにより、もし異常が見つかった場合でも、過去のデータと比較しながら早期に対処することができます。
事業者(会社側)から見た、がん検診を併せて実施するメリットと意義
従業員の健康は、企業の持続的な成長にとって不可欠な要素です。職場の健康診断に合わせてがん検診の受診機会を提供することは、企業にとっても多くのメリットと重要な意義があります。
これは、近年注目されている「健康経営」の観点からも非常に重要です。
健康経営とは?
「健康経営」とは、従業員の健康を経営的な視点から捉え、戦略的に実践することで、企業としての生産性向上や業績向上を目指す取り組みです。単に医療費を削減するだけでなく、従業員がいきいきと働ける職場環境を整備し、企業価値を高めることを目的としています。
従業員の健康維持と生産性向上
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がんの早期発見・早期治療は、従業員が重篤な状態に陥ることを防ぎ、治療期間の短縮や職場復帰の早期化に繋がり、業務への影響が最小限に抑えられます。これは従業員個人の生活の質(QOL)向上にも直結します。
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従業員が健康でいられることは、欠勤や休職のリスクを減らし、全体の生産性向上に貢献します。健康な従業員は集中力やモチベーションを維持しやすく、業務効率の向上にも繋がります。
医療費の抑制と健康保険組合の健全な運営
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がんが進行してから治療するよりも、早期に発見し治療する方が、多くの場合、医療費は低く抑えられます。
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これは、従業員個人の経済的負担を軽減するだけでなく、企業の加入する健康保険組合全体の医療費抑制にも寄与し、ひいては保険料の安定にも繋がります。
企業のイメージアップと採用力強化
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従業員の健康を積極的に支援する企業姿勢は、企業イメージの向上に大きく貢献します。
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「従業員の健康を大切にする会社」という評判は、優秀な人材の獲得にも繋がり、採用活動において有利に働きます。
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従業員のエンゲージメント(会社への愛着や貢献意欲)の向上にも寄与し、離職率の低下にも繋がる可能性があります。
安全配慮義務の履行とリスクマネジメント
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労働安全衛生法に基づき、事業者は従業員の健康管理に配慮する義務があります。がん検診の機会提供は、この安全配慮義務を果たす上でも重要な取り組みです。
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従業員の重篤な疾患を未然に防ぐことは、企業として予見可能なリスクを管理し、事業継続性を確保する上での重要なリスクマネジメントにもなります。
ESG経営への貢献
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近年重視されているESG(環境・社会・ガバナンス)投資において、「S(社会)」の側面、特に人的資本への投資は企業価値を測る重要な指標となっています。
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従業員の健康増進への積極的な取り組みは、健康経営優良法人認定制度など、外部からの評価にも繋がり、企業の持続可能性と競争力強化に貢献します。
どんながん検診が受けられるの?
職場の健康診断で受けられるがん検診の種類は、勤めている会社や加入している健康保険組合によって異なりますが、一般的には以下のような検診項目があります。
胃がん検診
胃部X線検査(バリウム検査)や胃内視鏡検査など。
肺がん検診
胸部X線検査や喀痰細胞診など。
大腸がん検診
便潜血検査など。
乳がん検診(女性)
マンモグラフィや乳腺超音波検査など。
子宮頸がん検診(女性)
細胞診など。
前立腺がん検診(男性)
PSA検査(血液検査)など。
これらの検診は、それぞれのがんのリスクを評価し、異常がないかを確認するためのものです。自身の年齢や性別、生活習慣などを考慮し、必要な検診項目を積極的に選びましょう。
検診結果を活かすことが最も大切
がん検診は「受けること」だけでなく、その「結果を正しく理解し、適切に行動すること」が非常に重要です。
「異常なし」でも安心しすぎない
今回の検診で異常が見つからなかったとしても、それは「現時点で異常が見当たらない」というだけであり、がんのリスクがゼロになったわけではありません。今後も定期的に検診を受診することが大切です。
「要精密検査」の指示が出たら必ず受診する
もし「要精密検査」の指示があった場合は、必ず医療機関を受診してください。これは、がんの疑いがあるから行う精密検査ではなく、より詳しく調べる必要があるという意味です。放置せずに指示に従うことが、早期発見・早期治療に繋がります。
まとめ
職場の健康診断は、皆さんの健康を守るための大切な機会です。この機会を最大限に活用し、がん検診を積極的に受けて、ご自身の健康維持に努めましょう。
ご自身の会社の健康診断で受けられるがん検診の項目や、費用負担について不明な点があれば、会社の健康管理担当部署や、加入している健康保険組合に確認してみると良いでしょう。
また、事業者(会社側)にとっても、職場の健康診断と一緒にがん検診の受診機会を設けることはメリットも多くあります。中小企業などの多くが加入する協会けんぽでは、胃がん検診・大腸がん検診と定期健康診断を組み合わせた「生活習慣病予防健診」という補助制度を設けています。こういった健康保険組合の補助などを上手に活用して毎年実施する事業者健診にがん検診を組み込むことは、事業者と従業員の双方にメリットがありますのでぜひご検討ください。
協会けんぽの生活習慣病予防健診についてはこちらをご確認ください
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