
筋肉は女性が健康的に生きて行く上で欠かせない物ですが、女性は男性よりも筋肉量が少ないため運動習慣がないとすぐに筋肉が落ちて老化を早めてしまいます。
そうならないためにも、食事や自宅でできる筋トレのポイントを管理栄養士・健康運動指導士がお伝えします。
筋肉量が減るとどうなるの?
日本人女性は欧米の女性と比べるとやせている人が多く、体質的にも筋肉のつきにくい人が多いと言われています。しかし、筋トレをすると足が太くなるから嫌、運動をやった事がないから苦手といったように、運動へのマイナスイメージを持った女性が運動習慣を持たずに歳を重ねると筋肉は減って行く一方になります。
30代を過ぎると1年に1%ずつ下半身の筋肉量が落ちるとも言われています。また、老化は足腰からと言われており、意識的に運動をしない生活を送っていると下半身の筋肉は20~80歳の間で筋肉の量は半分にまで減ってしまう事になります。
30年後、フレイルやサルコペニアという体の衰弱によって寝たきりや要介護にならない為にも、人生の中で一番若い今日から筋肉をつけて健康に生活するという意識を持ってトレーニングしていきましょう。
筋肉の役割
人間の体のうち、約40%を筋肉が占めていると言われています。普段歩いたり荷物を持ったりと、何気なく使っている筋肉には4つの大きな役割があります。
①力を出して運動をするための源
②エネルギー消費
③血液を送りだすなど、循環機能を補助
④外部からの衝撃から骨や内臓を守る
女性は30代に入ると運動量が不足して筋肉を維持するための機会が減って来やすいのが現状です。40代になると女性ホルモンが減少して体力も落ちやすく疲れやすくなり、50代に入ると筋肉量が減り腰痛や肩こりなどの症状に悩む人が増加します。
筋肉は健康的にハツラツと生きて行く上で欠かせないものです。痩せやすい身体を作る為にも、将来寝たきりにならないためにも、筋肉は若い頃から鍛えておいて損はありません。
女性の理想の筋肉量はどのくらい?
筋肉の発達に欠かせないホルモンの1つに「テストステロン」というものがあります。このホルモンは男性ホルモンのため、分泌量は圧倒的に男性の方が多く、女性の体内での分泌量は男性の10分の1程度しかないそうです。
また、女性の体内ではエストロゲンという女性ホルモンが多く分泌され、このホルモンはテストステロンの分泌を抑える働きがあるため、女性は男性よりも筋肉がつきにくいと言われています。しかし、性別に関わらず筋肉のつきやすさには個人差があり、生まれ持った遺伝子も大きく関係しています。
【筋肉量の求め方】
例)体重50㎏・体脂肪率25%の場合
体脂肪量=体重×体脂肪率(50㎏×25%=12.5㎏)
除脂肪量=体重-体脂肪率(50㎏−12.5㎏=37.5㎏)
筋肉量=除脂肪量×0.5(37.5×0.5=18.75㎏)
筋肉率=筋肉量÷体重=0.38
この計算方法から、この方の筋肉量は18.75㎏、筋肉率は38%という事が分かります。
女性の筋肉率の平均は一般的に25~35%と言われています。標準であれば26~27.9%、やや高い数値だと28~29.9%です。この数値を目安にしながらおおよその筋肉量の判断ができますので、25%を切らない事を目標にできると良いでしょう。
※一般的に健康であるとされる体脂肪率の目安は男性10~19%、女性20~29%であり
男性よりも女性の方が10%程高いという特徴があります。
運動で筋肉を増やして若いうちからとロコモを予防
筋トレと聞くと「キツイ」「筋肉が硬くなって女性らしさが失われる」「トレーニングジムに通わないといけない」というマイナスのイメージがあるかもしれませんが、鍛える部位を選んで適切な筋トレを行う事でより女性らしく、しなやかで美しい体形を目指す事ができますよ。
年齢を重ねると、立つ、歩く、座るといった移動に関わる動作がスムーズにいかなくなります。更には日常の他の動作も困難になり要介護や寝たきりに移行するケースが非常に多いのです。こういった状態はロコモ(ロコモティブシンドローム)と呼ばれ、誰にでも起こりうる症状の1つとされています。筋肉量の低下もロコモの原因となります。
筋肉をつけるための3つの原理
筋肉をつけるために運動や筋トレを始めようと意気込んだ半面、時間がないなどの理由で3日坊主になった経験はありませんか?トレーニングの失敗を減らすための3つの大原則を学んで行きましょう。
①負荷性の原理
日常生活で体感している負荷よりも高い負荷の筋トレやトレーニングをしないと意味がない事を表しています。トレーニングを続けているといつもの筋トレが楽に感じるようになり、筋力がアップした状態でいつもと同じ負荷の筋トレを行うとトレーニング効果が徐々に薄れてしまいます。
②可逆性の原理
トレーニングを続けると体は変化しますが、トレーニングをやめるとその効果が失われてしまう事を表しています。一般的にトレーニング期間が長ければその効果が失われる速度は遅く、短ければ早いと言われています。筋トレをして筋肉量を維持していくためには、継続する事が大切です。
③特異性の原理
トレーニングを行った内容に比例して効果が現れるという原理です。これは最も見落とされがちな原理で、例えば腹筋を鍛える筋トレを行うとお腹の筋力が、腕の筋肉を鍛える筋トレをすれば腕が鍛えられるというように、自分がどうなりたいのかという目的をはっきりさせてそのためのトレーニング方法を行わなければ効果は出ません。
そればかりか一番ダメージの大きい「トレーニングの失敗」に繋がってしまいます。目的やトレーニングの方向性がはっきり決まれば、あとは負荷性の原理に沿ってトレーニングをし、可逆性の原理にのっとって無理のないトレーニング計画を進めていきましょう。
女性が筋肉量を増やすと起こるメリットとは
女性の不調の多くは筋肉不足が原因となる事があります。更に自分は運動不足で筋肉が少ないと感じている女性は多いと言われています。運動不足で筋肉量が不足すると、短期的にも長期的にも身体に様々な悪影響を及ぼします。その反対に、女性が筋肉量をアップする事は健康的な体になる大きなメリットがあります。
ダイエットを成功に導く痩せやすい体になる
筋肉量が上がると基礎代謝が上がるので普段の生活をしていても痩せやすくなります。基礎代謝とは寝ているだけでも体が消費するエネルギーの事です。
痩せやすく太りにくい体を作る方法は、こちらのコラムでもお読み頂けます。
冷えを予防できる
筋肉は体温を調節する機能や熱を作る働きをしているので、筋肉量が減ると冷えやすい体になってしまいます。また、冷えが進むと筋肉が凝り固まり血流の悪い身体になり冷えが加速してしまいます。そうならない為にも、全身の筋肉量を減らさないようにしましょう。
むくみにくくなる
ふくらはぎは下半身の血液を心臓に向かって押し返すポンプのような作用を持っている事から、第2の心臓と呼ばれています。デスクワークで長時間椅子に座って脚の筋肉を長く動かさない状態が続くとむくんでしまいますし、座った状態よりも立った状態の方がより重力に逆らって血液を流す必要があるので脚がむくみやすくなります。
脚がむくみやすい方はこれから紹介する下半身の筋トレを実践して筋肉をつけていきましょう。
食事で筋肉を増やす方法
筋肉量を増やす為には食事を疎かにしない事が大切です。
タンパク質を欠かさずとる
人の身体は一部の臓器を除いてほぼ全てがタンパク質を材料に作られています。タンパク質は肌や髪の毛、爪をつややかに保つ働きがあり、骨、血液もタンパク質がなければ作られません。タンパク質の摂取量は体重1㎏あたり最低1gとされています。例えば体重60㎏の人が1日に摂るべきタンパク質の量は最低でも60gという事になります。
一般的な定食(ごはん、肉や魚の主菜、副菜、味噌汁)で摂れるタンパク質量は約20g程度ですので、これを3回食べるイメージを持って下さい。多くの方は夜ごはんにおかずをしっかりと食べる習慣があるためタンパク質をとれているかもしれませんが、朝ごはんや昼ごはんにも納豆や卵をプラスするなどタンパク質の量が増えるように心がけてみましょう。運動後30分以内にタンパク質を摂ると筋肉がつきやすくなりますよ。
タンパク質不足のサイン
太ももが細くなった、疲れやすくなった、イライラして寝つきが悪くなったと感じるなどの症状が現れたら、タンパク質を含む食事が不足しているかもしれません。以下の手軽に摂れるタンパク質源も賢く利用しましょう。
牛乳1パック(200㎖) 6.8g
ベビーチーズ1個(12g) 2.7g
水切りヨーグルト1個(100g) 10g
調整豆乳1パック(200㎖) 6.4g
木綿豆腐1パック(150g) 10.5g
納豆1パック(40g) 6.6g
ゆで卵1個 6.5g
ミックスナッツ(20g) 3.7g
無理なダイエットでエネルギー不足にならないようにする
筋肉をつけたいという気持ちから、炭水化物を抜くのが良いと考えている方もいるかもしれませんが、炭水化物を全くとらならいダイエットや1ヶ月に5㎏落とすいった無理なダイエットは今すぐに止めましょう。
炭水化物からのエネルギー量が減ると、体は筋肉を壊してエネルギーを得る事になるので本末転倒と言えます。丼や麺類など、炭水化物に偏った食事は考えものですが、生活習慣病予防の観点からも毎食茶碗1杯はお米を食べるようにしましょう。
自宅やオフィスでできる簡筋トレ
ジムに通わなくてもできる自宅筋トレをご紹介します。15~20回×3回セットを目安に、最初は筋肉をつけたい部位を中心に筋トレを始めてみましょう。
おしり
おしりの筋肉には大きく分けて大殿筋と中殿筋があります。中殿筋には股関節支える働きもあるため、体のバランスを整えるためにもしっかりと鍛えておきましょう。
【ヒップリフト】
①あお向けになって両ひざを立て、ゆっくり4つ数えながら太ももの裏側やお尻の筋肉を使ってお尻を持ち上げる
②体が一直線になるところまで持ち上げたらまた4つ数えながらお尻をゆっくり下ろしていく
ふともも
ふとももの筋トレで、スクワットは特に人間の体の中で最も大きな筋肉である大腿四頭筋や、その裏のハムストリングなどを鍛えられます。大腿四頭筋を鍛えると代謝も上がり太りにくい体を作る事ができます。
【スクワット】(椅子あり)
①いすに浅く腰かけ、足は肩幅に開く
②ももに手を置き背筋を伸ばしてゆっくりと立ち上がる
【レッグランジ】
①足を前後に大きく開き、うしろ足のかかとを上げる
②上半身は床と垂直に保ったまま前の足、うしろの足とも90℃まで曲げまる
③反対の足も同様に行う
胸・二の腕
たるみが気になる二の腕を鍛えられます
【プッシュアップ】
①肩幅より広めに両手を壁につく
②背筋を伸ばしたままひじを外側へ開くように曲げ、伸ばす
体幹
体幹を鍛える事で腰への負担を軽減する効果も期待できます。
【ドローイン】(椅子あり)
①お腹に両手をあて、座る
②おへそを背骨のほうへ引き寄せるようにお腹をへこませる
【プランク】
背筋を伸ばし、頭からかかとまでが一直線になるように保つ。
【ニーリフト】
①椅子に座り、背もたれに背中をつけて背中を丸くする
②おへそ中に入れ、下腹をへこますようにして膝を持ち上げ下ろす
筋トレ以外にも、床に座ってお尻歩き、テレビを見ながら立ってその場で足踏みをする、
階段の昇り降りなど、簡単にできる筋トレをしてみましょう。
筋トレ後は筋肉の疲労を回復するストレッチを忘れずに
筋肉は運動や筋トレにより壊して回復させる事で成長していきます。つまり、回復させるまでの流れがあって本当のトレーニング効果が表れるのです。筋肉の成長にはタンパク質を中心とした栄養素が使われますが、壊れた筋肉にいち早く栄養素を行きわたらせる方法がストレッチです。
ストレッチで重要なポイントは痛気持ち良い所で止めて息を止めずに30秒程度じっくり伸ばす事です。筋肉の回復を早める事は筋肉の成長を促進する事にも繋がりますので、その日の疲れはその日に解消するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?ジムに通わずとも、自宅で簡単にできる筋トレはたくさんあります。
筋肉はたとえ90歳になっても筋トレをする事で増やす事は可能ですのでフレイルやロコモ予防のためにも筋肉を増やしていきましょう。もし筋トレが3日坊主になってしまったとしても嘆く事はなく、3日頑張れたんだから次は6日、10日、1ヶ月とまた新たな目標を作って筋トレをスタートしていきましょう。
3ヶ月までは見た目が変わらずモチベーションが上がりにくいかもしれませんが、3ヶ月を超えると見た目の体つきが変化すると言われています。焦らず着実に自分のペースでトレーニングを続けていきましょう。
社員の健康管理はライフサポートサービス株式会社へご相談下さい。
執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士
生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。