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健康診断の受診率が低い理由とは? 計算方法や上げるポイントを解説!

「自社の健康診断の受診率がなかなか上がらない…」
「そもそも受診率はどうやって計算するの?」
と悩む総務・健康管理担当者の方は多いのではないでしょうか。
労働安全衛生法により、企業には従業員への定期健康診断の実施が義務付けられています。
しかし、実際の受診率は80%台にとどまるケースも少なくありません。
受診率が低いままでは、従業員の疾病リスクを見逃すだけでなく、企業としての安全配慮義務を果たせないリスクにもつながります。
本記事では、健康診断の受診率の計算方法から、受診率が低くなる主な理由、そして受診率を効果的に引き上げるための具体的なポイントまでをわかりやすく解説します。
- 健康診断の受診率とは?基本をおさらい
- 健康診断の受診率が低い7つの理由
- 1. 業務が忙しく時間が確保できない
- 2. 自己管理しているから大丈夫と思っている
- 3. 受診の手続きや予約が面倒くさい
- 4. 症状が出てから病院へ行けばよいと考えている
- 5. 病気の発覚を恐れている(受診恐怖)
- 6. 検査結果が人事評価に影響すると心配している
- 7. 健康診断の結果情報が漏洩することを懸念している
- 健康診断の受診率を上げる7つのポイント
- 1. 受診しない理由を個別にヒアリングする
- 2. 健康診断の重要性・メリットを丁寧に周知する
- 3. プライバシー保護・評価への非影響を明確に伝える
- 4. 受診にかかる時間・費用・手間の負担を軽減する
- 5. 受診しやすい環境・スケジュールを整備する
- 6. 健康診断に関する社内規則・ルールを整備する
- 7. 外部サービス・健康管理システムを活用する
- 健康診断の受診率に関するFAQ
- Q1. パートやアルバイトも健康診断の受診対象(分母)に含める必要がありますか?
- Q2.未受診の従業員に対して、企業はどこまで強く受診を促せますか?(ペナルティは可能?)
- Q3.従業員が「個人で受診した人間ドックの結果」を提出した場合、受診率にカウントしてよいですか?
- まとめ
健康診断の受診率とは?基本をおさらい
企業において従業員の健康管理は重要な経営課題の一つです。
その第一歩となるのが「健康診断の受診」ですが、まずは受診率の基本的な定義や計算方法、そして受診率が低い場合に企業が負うリスクについて正しく理解しておきましょう。
受診率の定義と実施率との違い
健康診断における「受診率」とは、健康診断の対象となる従業員のうち、実際に受診した人の割合を指します。
よく混同されやすい言葉に「実施率」がありますが、これらは以下のように明確な違いがあります。
- 受診率(従業員目線)…対象となる従業員のうち、何%が受診したかを示す指標。
- 実施率(企業目線)…企業全体として、法律で定められた健康診断を「実施したか・していないか」を示す指標。または、事業所単位で健康診断の機会を提供している割合を指す。
労働安全衛生法第66条により、企業は従業員に対して年に1回(特定の有害な業務に従事する者は年2回)の定期健康診断を実施する義務があります。
そのため、企業側の「実施率」が100%(=受診機会を提供している)であっても、従業員が受診しなければ「受診率」は下がってしまいます。
企業に求められるのは、機会を提供するだけでなく、実際に全員に受診してもらう(受診率100%を目指す)ことです。
健康診断の受診率の計算方法
健康診断の受診率は、以下の計算式で算出します。
受診率(%)=( 実際に健康診断を受診した人数 ÷ 健康診断の対象となる従業員数 )× 100
ここで重要となるのが「対象となる従業員数(分母)」の定義です。
正社員はもちろんのこと、以下の条件を満たすパート・アルバイトなどの「常時使用する労働者」も対象に含める必要があります。
- 期間の定めのない契約(または1年以上使用される予定)であること
- 同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上働いていること
※1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の概ね2分の1以上4分の3未満である場合も、実施することが「望ましい」とされているため、自社の対象範囲を事前に確認しておきましょう。
受診率が低いことで企業が抱えるリスク
受診率が低い状態を放置すると、企業は以下のような重大なリスクを抱えることになります。
1. 労働安全衛生法違反による罰則
企業が従業員に健康診断を受診させないことは、労働安全衛生法違反に該当します。
是正勧告に従わない場合など、悪質なケースでは50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条)が科される可能性があります。
2. 安全配慮義務違反に問われるリスク
企業には、従業員が安全かつ健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」(労働契約法第5条)があります。
健康診断を受診させず、従業員の脳・心臓疾患などの重篤な病気や過労死を見過ごしてしまった場合、企業は高額な損害賠償請求や民事上の責任を追及されるリスクがあります。
3. 生産性の低下や人材の離職
健康状態の悪化を早期に発見できないことで、従業員のパフォーマンスが低下したり、突然の長期休職・退職に追い込まれたりします。
これは現場の業務負荷を増やし、企業全体の生産性低下を招きます。
健康診断の受診率が低い7つの理由
総務・健康管理担当者が「受診しなさい」と呼びかけるだけでは、受診率はなかなか上がりません。
なぜ従業員は健康診断を受けないのか、その背景にある7つの主な理由を解説します。
1. 業務が忙しく時間が確保できない
最も多い理由の一つが「仕事が忙しくて健康診断に行く時間がない」というものです。
特に、繁忙期と受診期間が重なっている場合や、慢性的な人手不足に陥っている部署では、従業員が「自分が数時間抜けることで周囲に迷惑がかかる」と遠慮してしまい、受診を後回しにしてしまいます。
2. 自己管理しているから大丈夫と思っている
「普段から食事や運動に気を使っている」「体調が良いから受ける必要がない」と過信しているケースです。
また、個人で人間ドックやほかのがん検診を受けているため、会社の簡易的な健康診断は不要だと自己判断してしまっているケースもあります(※個人で受診した結果を会社に提出すれば代替可能ですが、その手続きを行っていない場合も含まれます)。
3. 受診の手続きや予約が面倒くさい
健康診断の予約システムが複雑であったり、指定された医療機関への電話予約がなかなかつながらなかったりすると、従業員は手続きを面倒に感じて放置してしまいます。
また、受診票の記入や検便・検尿の準備、当日のアクセスが不便なことも受診を遠ざける要因になります。
4. 症状が出てから病院へ行けばよいと考えている
健康に対する意識(ヘルスリテラシー)が低く、「健康診断は病気になってから受けるもの」「体に不調が現れたら病院に行けばいい」と考えている従業員もいます。
健康診断の本質である「自覚症状のない初期段階での異常発見(予防医療)」の重要性が理解されていません。
5. 病気の発覚を恐れている(受診恐怖)
「もし重大な病気が見つかったらどうしよう」という恐怖心から、あえて受診を避ける心理(受診恐怖)が働くことがあります。
特に生活習慣が乱れている自覚がある人ほど、「現実を突きつけられたくない」「要再検査と言われるのが怖い」という理由で拒否反応を示しがちです。
6. 検査結果が人事評価に影響すると心配している
「健康診断の結果が悪いと、出世に響くのではないか」「重要なプロジェクトから外されるのではないか」といった、人事評価や処遇への悪影響を懸念して受診を拒むケースです。
特に、持病を会社に隠しておきたいと考えている従業員に多く見られます。
7. 健康診断の結果情報が漏洩することを懸念している
健康診断の結果は、極めてセンシティブな個人情報(要配慮個人情報)です。
「自分の健康状態や体重、既往歴などが、社内の同僚や上司に知られてしまうのではないか」というプライバシー保護に対する不安や、会社の情報管理体制への不信感が受診をためらわせる原因になります。
健康診断の受診率を上げる7つのポイント
従業員が健康診断を受診しない理由が分かれば、それに対する的確なアプローチが可能です。
受診率を効果的に引き上げるための7つのポイントを解説します。
1. 受診しない理由を個別にヒアリングする
まずは自社において、なぜ受診率が低いのかの「真の原因」を特定しましょう。
未受診者に対して、アンケートや個別面談を通じて「なぜ受診できないのか(忙しいのか、手続きが面倒なのかなど)」をヒアリングします。
原因を特定することで、次に打つべき対策が明確になります。
2. 健康診断の重要性・メリットを丁寧に周知する
従業員のヘルスリテラシーを高めるために、社内報やイントラネット、ポスターなどを活用して健康診断の重要性を継続的に発信しましょう。
「自覚症状がない段階で病気を見つけることが、いかに自分や家族の生活を守ることにつながるか」を啓発します。
また、会社で実施する健康診断は労働者側にも「受診する義務」があること(労働安全衛生法第66条第5項)を、優しく、かつ明確に伝えることも大切です。
3. プライバシー保護・評価への非影響を明確に伝える
従業員の不安を解消するため、以下の2点を社内に明文化して周知しましょう。
- 「健康診断の結果は厳重に管理され、健康管理業務(産業医や担当者)以外の目的で第三者に開示されることはない」
- 「健康診断の結果のみを理由として、不当な人事評価や不利益な取り扱いを行うことは一切ない」
4. 受診にかかる時間・費用・手間の負担を軽減する
受診に伴うハードルを徹底的に下げます。
時間の負担軽減
健康診断の受診時間を「労働時間(有給扱い)」として認め、勤務時間中に受診できるようにします(※一般健康診断の受診時間は、労使協議の上で受診時間分の賃金を支払うことが望ましいとされています)。
費用の負担軽減
基本健康診断の費用は会社が全額負担することはもちろん、オプション検査(がん検診など)の費用補助を充実させます。
手間の負担軽減
受診予約を会社側が一括して行う、またはスマホから数タップで予約できるシステムを導入します。
5. 受診しやすい環境・スケジュールを整備する
「業務が忙しくて行けない」を防ぐため、受診スケジュールを工夫します。
巡回健診(集団健診)の導入
自社の会議室や敷地内に健診車を呼ぶことで、移動時間をゼロにし、業務の合間に受診できるようにします。
巡回健診・集団健診(出張健診・バス健診) | ライフサポートサービス
受診推奨期間の設定と分散
部署ごとに「受診推奨月」を設定し、業務の繁閑に合わせて計画的に受診させます。
また、上司に対して「部下に受診させることも管理職の評価対象である」と位置づけ、部署全体で受診を促す雰囲気を醸成します。
6. 健康診断に関する社内規則・ルールを整備する
就業規則に「健康診断の受診義務」に関する規定を明確に記載します。
「正当な理由なく受診を拒否した場合は、就業規則に基づき指導・処分の対象となる場合がある」といったルールを設けることで、従業員に対して受診が必須であることを認識させます。
ただし、高圧的に義務を押し付けるのではなく、まずは受診しやすい環境づくりを先行させることが成功のコツです。
7. 外部サービス・健康管理システムを活用する
総務・健康管理担当者の業務負荷が高すぎると、未受診者への個別督促やスケジュール調整が疎かになりがちです。
健康管理システムや、健診予約・結果回収を代行してくれる外部アウトソーシングサービスを活用しましょう。
自動で未受診者にリマインドメールを送信する機能などを使うことで、担当者の工数を大幅に削減しながら、漏れのない督促が可能になります。
健康診断の受診率に関するFAQ
健康診断の受診率向上に向けて、総務・健康管理担当者の方からよく寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。実務を進める際の参考にしてください。
Q1. パートやアルバイトも健康診断の受診対象(分母)に含める必要がありますか?
A1.原則として、以下の2つの条件をどちらも満たすパート・アルバイト従業員は「常時使用する労働者」とみなされるため、受診対象(分母)に含める必要があります。
- 期間の定めのない契約、または契約期間が1年以上(特定業務従事者は6ヵ月以上)であること、あるいは更新により1年以上使用される見込みがあること
- 1週間の労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者(正社員)の4分の3以上であること
なお、週の労働時間が正社員の概ね2分の1以上4分の3未満である従業員に対しても、健康診断の実施が「努力義務」とされているため、可能な限り受診を促すことが推奨されます。
Q2.未受診の従業員に対して、企業はどこまで強く受診を促せますか?(ペナルティは可能?)
A2.企業には「安全配慮義務」および「健康診断実施義務」があり、従業員には「健康診断受診義務」があります(労働安全衛生法第66条第5項)。
そのため、企業は従業員に対して受診を強く指示・命令することができます。
就業規則に「健康診断の受診を義務付ける旨」および「正当な理由なく拒否した場合は懲戒処分の対象とする旨」を明記していれば、再三の催促に応じない未受診者に対して、就業規則に基づいた懲戒処分(けん責や減給など)を検討することも法的には可能です。
ただし、感情的な対立を避けるためにも、まずは未受診の理由(業務多忙、受診機関の予約が取れないなど)をヒアリングし、受診しやすい環境を整えるアプローチを優先しましょう。
Q3.従業員が「個人で受診した人間ドックの結果」を提出した場合、受診率にカウントしてよいですか?
A3.はい、カウントして問題ありません。
従業員が会社の指定した健康診断ではなく、自費や加入している健康保険組合の補助を利用して個人で人間ドック等を受診した場合であっても、労働安全衛生法で定められた「法定の検査項目」がすべて網羅されており、その結果(写し)を会社に提出した場合は、法律上の定期健康診断を受診したものとみなされます。
提出された結果は、通常の健康診断結果と同様に5年間保存する義務があります。
まとめ
健康診断の受診率が低い状態は、従業員の健康リスクを見逃すだけでなく、企業にとっても「安全配慮義務違反」や「生産性低下」といった大きな経営リスクを伴います。
受診率を100%に近づけるためには、単に「受けてください」と指示するだけでなく、従業員が受診を避ける「忙しさ」「手続きの面倒さ」「プライバシーへの不安」などの心理的・物理的ハードルを一つずつ取り除いていくことが重要です。
就業規則の整備や受診時間の労働時間化、さらには健康管理システムや外部の予約代行サービスを上手く活用しながら、従業員が無理なく安心して受診できる環境づくりを進めていきましょう。

