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労働者の健康を守る!事業者が知るべき「特殊健康診断」の義務とは?

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労働者の健康を守る!事業者が知るべき「特殊健康診断」の義務とは?

「うちの会社は健康診断をちゃんとやっているから大丈夫!」そう思っている事業者の方、もしかしたら落とし穴があるかもしれません。実は、特定の有害な業務に携わる労働者には、通常の健康診断とは別に「特殊健康診断」の実施が法律で義務付けられています。

これは、労働安全衛生法に基づいて労働者の健康と安全を守るための重要な制度。もし怠ってしまうと、労働者の健康を害するだけでなく、法律違反として罰則の対象となる可能性もあります。

今回は、この特殊健康診断の中でも、特に有機溶剤特定化学物質じん肺(粉じん)に焦点を当てて、事業者の義務と詳細をわかりやすく解説します。

なぜ特殊健康診断が必要なの?

通常の健康診断では見つけにくい、特定の有害物質へのばく露や、有害な作業による健康障害を早期に発見し、適切な対策を講じることで、労働者の健康を守り、増進することが目的です。

事業者に課せられる「9つの義務」

特殊健康診断の実施にあたり、事業者は以下の重要な義務を負っています。

  1. 実施義務: 法令で定められた項目と頻度で、対象となる労働者に特殊健康診断を実施します。
  2. 費用負担義務: 診断にかかる費用は、全て事業者が負担します。
  3. 医師の選定: 専門知識を持つ医師を選び、診断を依頼します。
  4. 結果の記録と保存: 診断結果を記録し、原則5年間保存します。
  5. 結果の通知: 診断結果は、遅滞なく労働者本人に伝えます。
  6. 医師からの意見聴取: 診断結果に基づき、医師から就業上の措置について意見を聞きます。
  7. 就業上の措置: 医師の意見を尊重し、作業環境の改善や配置転換など、適切な措置を講じます。
  8. 所轄労働基準監督署長への報告: 特定の業務における特殊健康診断の結果は、労働基準監督署長に報告が必要です。
  9. 秘密の保持: 診断結果や労働者の個人情報は厳重に管理し、秘密を守ります。

要注意!特に重要な3つの特殊健康診断

ここからは、特に多くの企業に関わる可能性のある「有機溶剤」「特定化学物質」「じん肺」の特殊健康診断について、各項目を詳しく見ていきましょう。

1. 有機溶剤健康診断

ペンキや接着剤、洗浄剤などに含まれる有機溶剤は、私たちの身の回りの多くの場所で使われています。これらの物質を扱う業務では、特殊健康診断が必須です。

対象となる労働者

第一種有機溶剤、第二種有機溶剤を使用して、「労働安全衛生法施行令 第22条 第1項 6号」に該当する業務に常時従事する労働者。
労働安全衛生法施行令については、こちらのWEBサイト をご参照ください

対象となる主な有機溶剤

トルエン、キシレン、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、ノルマルヘキサンなど。

主な検査項目

  • 既往歴、業務歴の調査
  • 自覚症状、他覚症状の有無の検査(神経学的検査、眼科検査、消化器症状など)
  • 尿中の代謝物検査(例:トルエンの場合は尿中馬尿酸、キシレンの場合は尿中メチル馬尿酸など)
  • 肝機能検査、腎機能検査、貧血検査など

健診の実施頻度

雇入れ時、当該業務への配置換え時、その後は6ヶ月以内ごとに1回

ポイント

有機溶剤は、吸入だけでなく皮膚からも吸収される場合があります。頭痛、めまい、吐き気、けん怠感など、体調の変化があった場合はすぐに申し出るよう、労働者にも周知しましょう。

2. 特定化学物質健康診断

特定化学物質は、発がん性や急性中毒など、特に人体に有害な影響を及ぼす可能性のある物質です。これらを扱う業務では、厳重な健康管理が求められます。

対象となる労働者

第1類物質、第2類物質を製造し取り扱う業務に常時従事する労働者、および過去に常時従事していた労働者で現に使用している者。

対象となる主な特定化学物質

ベンゼン、アクリロニトリル、クロム酸、塩化ビニル、ニッケル化合物など

主な検査項目

特定化学物質の種類によって異なりますが、一般的には以下の項目が含まれます。

  • 既往歴、業務歴の調査
  • 自覚症状、他覚症状の有無の検査
  • 尿中または血液中の当該物質またはその代謝物の濃度測定
  • 臓器機能検査(肝機能、腎機能、呼吸機能など)
  • 発がん性物質については、がんの早期発見を目的とした検査(例:ベンゼンの場合は血液検査で白血球数・赤血球数)

健診の実施頻度

雇入れ時、当該業務への配置換え時。その後は特定化学物質の種類と作業内容によって異なりますが、概ね6ヶ月以内ごとに1回、または1年以内ごとに1回。

ポイント

特定化学物質は多岐にわたり、それぞれで健康影響や検査項目が異なります。自社で取り扱っている化学物質の安全データシート(SDS)を確認し、適切な健康診断項目を把握することが重要です。

3. じん肺健康診断

鉱物、金属、岩石、土石などを扱う際に発生する粉じんは、肺に吸い込むことで「じん肺」という深刻な病気を引き起こす可能性があります。

対象となる労働者

粉じん作業(鉱物、金属、岩石、土石、セメント、けい肺を発生させるおそれのある粉じんを製造し、又は取り扱う作業など)に従事するの労働者。

主な検査項目

  • 既往歴、業務歴の調査
  • 胸部エックス線直接撮影による検査(必須)
  • 呼吸機能検査(努力性肺活量、1秒量など)
  • 結核に関する検査
  • 医師が必要と認めるその他の検査

健診の実施頻度

雇入れ時、当該業務への配置換え時。その後は、粉じん作業の種類とじん肺管理区分に応じて、3年以内ごとに1回、または1年以内ごとに1回。

ポイント

じん肺健康診断の結果に基づき、「じん肺管理区分」(管理1~管理4)が決定され、その区分に応じて、就業場所の変更や作業転換などの措置が講じられます。じん肺は進行性の疾患であり、一度発症すると完治が難しい場合があるため、早期発見と適切な管理が極めて重要です。

まとめ:労働者の健康は企業の財産

特殊健康診断は、単なる形式的な義務ではありません。労働者の健康を守り、安心して働き続けられる職場環境を築くための重要な投資です。適切な健康管理は、企業の生産性向上にもつながります。

法令を遵守し、専門医の意見を尊重しながら、適切に特殊健康診断を実施することで、労働者の健康維持に努めましょう。

ご自身の会社で特殊健康診断が必要かどうか、迷った場合は、地域の労働基準監督署や産業医にご相談ください。


当社では、埼玉県内を中心に巡回健診をご支援しています。
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特殊健康診断 - ライフサポートサービス

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