日本人がかかりやすい? 高血糖を賢く予防する方法をご紹介

生活習慣病の中でもよく耳にする「糖尿病」ですが、進行すると重篤な合併症を引き起こす事になります。

高血糖の症状を放置せず、食事と運動でコントロールする方法を管理栄養士、運動指導士の観点からお話しいたします。

高血糖を知ろう

まずは高血糖を知るために、高血糖が引き起こしやすい病気や注意点、女性特有の糖尿病などを解説します。

高血糖ってどんな病気?

人間の生命を維持する3大栄養素である糖質・脂質・タンパク質の中で、
食後の血糖値を上げやすいのはどの栄養素でしょうか?

答えは「糖質」です。狩りをして獣の肉や魚を釣り、木の実や雑穀を食べていた古代の日本人と違い、現代人はコンビニやファストフードなど、甘い物や糖質たっぷりの食べ物が24時間簡単に手に入るようになりました。

血糖とは、血液中に含まれるブドウ糖の事です。その量を「血糖値」といいます。健康な人の場合、食事によって血糖値が上がると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、すみやかに血糖値が下がるというメカニズムです。

しかし高血糖が続くと、膵臓はインスリンを多く出そうとして疲弊してしまいます
糖尿病の方の場合、食事によってインスリンが分泌されても作用が弱いため、血糖値が下がらないといった事態に陥ります。

糖尿病は先天的な要因の1型糖尿病よりも、生活習慣やストレスが原因となる2型糖尿病が多くを占めます。実は日本人は、欧米人に比べてインスリンを分泌する能力が低く、糖尿病にかかりやすい人種なのです。

高血糖はなぜ注意か必要なのか

特定健診では空腹時血糖100mg/dl以上を特定保健指導の基準値としています。糖尿病は自覚症状が少なく、のどが渇いたり、だるさなどの症状が出る頃にはすでに病気が進行している事が多い病気です。

そして糖尿病で怖いのは神経障害、網膜症、腎症の3大合併症です。糖尿病を放置すると主に身体の中の細い血管から進行して行き、重篤な合併症に繋がってしまいます。糖尿病性腎症の場合、将来人工透析になる確率が上がります

膵臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、とても頑張り屋さんなのです。

合併症が出る10年以上前から、膵臓の機能低下は起こっていると言われていますので、高血糖状態の方は毎日の食事と運動で早めに予防していきましょう。

女性特有の糖尿病に注意

 妊娠糖尿病は妊娠する事で起こるホルモンバランスの変化や、胎盤から分泌されるホルモンの影響によりインスリンの効きを抑えてしまう作用が働き、糖代謝異常を発病してしまう病気です

妊娠糖尿病は早産や流産に関係するだけでなく、巨大児に基づく難産など、母子共にリスクを伴います。

妊娠糖尿病は一般的な糖尿病と異なり妊娠中に限定される一時的な疾患で、出産後には治り、改善されるパターンがほとんどです。

しかし、全員が一時的というわけでなく、数%の方がそのまま2型糖尿病に移行します。そして、10年後、20年後に約30~65%の方が2型糖尿病を発症すると推測されていますので、妊娠中の血糖値管理は極めて重要です。

後期が特に血糖値が上がりやすくなるため、食事の内容に気を付けていきましょう。

高血糖・糖尿病予防のための食べ方7つのコツ

高血糖や糖尿病を予防するには、食べ方の7つのコツを知っておくことが大切です。ここからは、7つのコツについて詳しく見ていきましょう。

① カロリーを摂りすぎない

「ご飯は丼物、飲んだ後にシメのラーメン、甘い物は別腹」

このような生活が日常化すると、高血糖を改善できないばかりか消費できなかったカロリーが蓄積され、肥満やメタボの原因になると共に動脈硬化も進行してしまいます。健康の為に、腹8分目、お腹が空いてから食べる習慣を心がけましょう

② 食べる順番に気をつける

3大栄養素の中でも、タンパク質は血糖値を上げにくい性質があります
高血糖を予防したい場合は、主菜(肉や魚などの主になる食事)や汁物から頂きましょう。

ご飯は最後に食べるか、多い場合は半分盛りにするのが良いです。
また、糖の吸収を穏やかにする「食物繊維」が多く含まれる野菜やキノコから食べるのも良い方法です。

③ 朝ご飯を食べる、食事を抜かない

仕事で夜ご飯が遅くなり、お腹が空かないといった経験はありませんか?

朝ご飯を抜いてしまうとエネルギー不足になり、血糖値が低い所に昼食が入ってくると血糖値が急上昇してしまい、高血糖状態になります。この習慣を続けると、インスリンが効きにくい身体になってしまいます

夜ご飯が遅くなる場合は軽めに済ませ、朝の空腹の状態を作りましょう。

食事は単品のパンだけや米だけよりも、タンパク質(卵、納豆、魚、豆腐、肉、ヨーグルトなど)を一緒に摂る事で血糖値の上昇が穏やかになります。

④ よく噛んで食べる

できるだけスマホやテレビを消して、ながら食いを防止しましょう。

ながら食いでは食べた量が把握しにくく、満足感も得られません。

ゆっくりと、ひとくち30回を目標に(最初は15回でも良いので、数える習慣をつけましょう)噛みましょう。しっかり噛む事で大食い、早食いを防止するだけでなく、満腹中枢を刺激するため満腹感が早く得られます。また、インスリンの追加分泌を助ける働きもあります。

⑤ GI値(グリセミックインデックス)を知る

食べ物には血糖値が上がりやすい物と、上がりにくい物があります。その値をGI値と呼び、高いものは血糖値が上がりやすいので、GI値の数値が低い食べ物を選択して高血糖を予防する事ができます

【GI値の高い食べ物】
主に精製されている白い主食はGI値の数値が高く、下記に示す食品は特にGI値が高いものです。そのため単品食べや食べ過ぎに注意が必要です。
・白いパン
・白米、餅
・砂糖
・うどん

また、野菜であってもじゃがいも、人参、とうもろこしなどGI値の高い食べ物には注意が必要です。

【GI値の低い食べ物】
精製されていない主食や、タンパク質を多く含む食べ物は、GI値が低い傾向にあります。
・玄米
・パスタ
・豆類
・きのこ、海藻類 など

GI値の目安を知り、食材の組み合わせを工夫することで血糖値の急上昇を抑える事ができます。

例えばうどんにお餅を組み合わせる力うどんでは、共にGI値の高い食材なので血糖値が上がりすぎてしまいます。
逆に、白いご飯に納豆や卵などの低GI食材を組み合わせると、血糖値の上昇が緩やかになります

⑥ 魚を食べる頻度を増やす

肉や揚げ物の油を摂りすぎると、肥満や動脈硬化を引き起こす原因にもなり、高血糖を悪化させてしまうでしょう

一方、魚に含まれる良質な油にはインスリンの働きを良くしてくれる「アディポネクチン」の分泌を増やす事が知られています。
魚由来の油は血液をサラサラにしてくれる作用もありますから、高血糖のみならず、生活習慣病の予防全般に利用できます。

⑦ 日常的に摂っている甘い物を見直す

日常的に習慣化している甘い物、チョコレートなどのお菓子や飲み物はありませんか?

珈琲や紅茶になんとなく砂糖を入れる習慣のある方は、砂糖の量を減らしてみたり、1回分の飲み物をお茶や水に変える事で砂糖の量を減らす事ができます

缶コーヒーの砂糖にも注意が必要です。最初から完璧を目指すと疲れてしまいますので、3日間成功した、次は1週間、と継続できるようにチャレンジしましょう。

また、スポーツドリンクは身体に良いイメージがありますが、実は砂糖が沢山含まれていて、角砂糖に換算すると5~8個分とも言われています。

砂糖はGI値が高く、急激に血糖値を上げるため注意が必要です。インスリンには血中の糖分を脂肪に換えて体にため込む働きがあるため、少量の砂糖でも毎日の習慣で肥満に繋がるリスクが上がります。

このように、食事のとり方を知るだけで高血糖を予防する事が出来ます。

高血糖予防のためのレシピ 

高血糖予防には、 鶏と大豆のスープカレー がおすすめです。

 

材料(2人前) 

鶏手羽元   6本

大豆水煮   100g

玉ねぎ    1個

しめじ    1/2パック

ピーマン   2個

トマト    3個

オリーブオイル 小さじ2

カレーフレーク 60g

塩       小さじ1/2

きび砂糖        小さじ1

水       200ml

 

作り方

  • ピーマンは縦に4等分に切り、ヘタと種をとる

玉ねぎは8等分、トマトは適当な大きさにくし形に切る

  • 手羽元は流水で洗い、キッチンペーパーで水気をふく
  • 大きめのフライパンを中火にかけてオリーブオイルを入れ、②の

全面に焼き色がつくまで炒め、塩で味付けする

  • トマト以外の野菜を入れ、油がなじむまで炒める
  • 水とカレーフレークを加えてよく混ぜ、大豆、トマト、きび砂糖を加えて

蓋をして弱火で15分煮る

 

☆栄養ポイント☆

タンパク質が多く摂れるレシピです。

カレーの定番野菜であるジャガイモや人参は糖質が高いので、高血糖の予防には他の野菜も利用してみましょう。

キノコは血糖値の吸収を穏やかにする働きがあります。

主食のごはんやパンを雑穀米やライ麦パンにすると食べごたえがあり、糖質の摂りすぎを防ぎます。

 

高血糖対策に効果のある運動

高血糖の予防には、食事療法と運動療法で生活習慣を改善する事が極めて重要です
ある調査では、血糖値効果作用のある薬よりも、生活習慣改善の方が糖尿病の発症予防に効果的である事がわかっています。

運動をする事で血液中の糖が筋肉へ運ばれ、エネルギーとなって利用される事で血糖値が下がります。また運動を習慣化する事によって健康な人もインスリンが効きやすい体になるため、普段分泌されるインスリンの量が少なくても済むようになり、膵臓への負担軽減になります。

運動の種類としては、日常で継続しやすいウォーキング、ジョギング、自転車などのように、全身を使い、それでいて膝や腰などに負担のかからない有酸素運動が効果的です。

食後の高血糖を改善する目的から、食後30分からの運動開始が望ましいです。

また、運動をしていて、糖尿病の方が急に低血糖に陥る事があります。血糖値が下がりすぎてめまいや脱力感がある時は、飴玉やジュースで糖分を補給しましょう

まとめ

今回は、高血糖や糖尿病について詳しく解説しました。食事に偏りのある方や運動不足の方は高血糖に注意が必要です。

食事療法や運動など毎日の生活習慣からできそうな事を取り入れて、高血糖や糖尿病を予防していきましょう。