ストレスチェックとは? 制度やチェックリストを紹介します

チェックリスト





職場、家庭環境、人間関係など、私たちの周囲にはさまざまなストレスとなる原因があります。ストレス状態が長く続くと、心はもちろんのことながら、体にも悪影響を及ぼします。

ストレス性の睡眠不足から集中力が途切れ、仕事のパフォーマンスが落ちてしまっては、企業としての生産性も落ちてしまうでしょう。

ストレス状態にあるかどうかは、個人でチェックすることが可能です。そこで、ストレス状態を自覚できるよう自身の状態を客観視してみましょう。

ストレスチェックとは

「ストレスチェック」とは言葉どおりに捉えると「ストレス状態のチェック」だとわかります。しかしストレスチェックは「制度」の意味もあることをご存知でしょうか?

「労働安全衛生法」の改正により、平成27年以降、50人以上の労働者がいる事業所でストレスチェック制度の導入が義務付けされました。

ストレスチェック制度が設定された背景

メンタルヘルスの不調が原因とする休職者及び離職者の増加が、ストレスチェック制度義務化の背景にあります。メンタルヘルスの不調で労災認定がされた件数が増加したことを受け、平成26年に「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が公布され、翌年よりストレスチェック制度の導入が義務化されました。

つまり増加する労働者のメンタルヘルス不調に歯止めをかけるため、国が企業に働きかけ、ストレスへの対策を取ったということです。

しかし残念ながら現在でもメンタルヘルスの不調による労災認定は減少していません。厚生労働省が発表した令和3年度「精神障害に関する事案の労災補償状況」によると、労災の請求件数は前年度に比べて295件増加し、平成29年度の請求件数から比較すると約600件以上の増加となります。

参考

厚生労働省:精神障害の労災補償状況https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000955417.pdf

ストレスチェック制度の条件

ストレスチェック制度が義務化されたと言っても、全ての企業で義務化された訳ではありません。先ほども少し触れましたが、ストレスチェック制度は原則50名以上の労働者がいる企業に対して義務化されています。

この『50人以上』、とは法人単位でのカウントではなく「事業場」が単位です。

たとえば、本社に30人、それ以外に3つの支社にそれぞれ10人の企業であればストレスチェック制度の義務対象企業からは外れます。

本社に51人、支社に49人であれば、本社のみが義務化対象です。

つまり本社でストレスチェックを行い支社では行わない、あるいはストレスフルな環境であるにも関わらず対策がなされていない、となると労働者から不満が出ても不思議ではありません。

ストレスチェック制度実施後に企業がすべきこと

ストレスチェック制度に対して、しばしば「ストレスチェックは意味ない」と判断する上層部がいます。

しかしながら「ストレスチェックは意味ない」と感じてしまうのは実施後の姿勢が深く関わっていることも。

「ストレスチェックは意味ない」と言わせる結果にならないよう、ストレスチェック制度は事後措置が大切です

では、ストレスチェック制度は実施後にどのような措置を取れば良いのか、その具体的な行動をみていきましょう。

 

高ストレス者の選定

ストレスチェック実施者によって、高ストレス者の選定を行います。

高ストレス者か否かは、以下の基準によって判断するよう基準が設けられています。

【1】心理的な負荷による心身の自覚症状に関する項目(心身のストレス反応)の評価点数の合計が高い者

【2】「心理的な負荷による心身の自覚症状に関する項目」(心身のストレス反応)の評価点数の合計が一定以上の者であって、かつ「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」(仕事のストレス要因)および「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目(周囲のサポート)の評価点数の合計が著しく高い者

また、この他選定基準に加えて実施者または産業カウンセラーなどが面談を行い、その結果を参考として選定する方法もあるとされます。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

 

心身における自覚症状の点数だけでの判断ではなく、仕事のストレス要因での点数も判断基準とされるのには、心身の疲労に自覚症状を持たない人がいるためです

そのため、点数だけでは見落としてしまう「蓄積疲労」を発見するため、職場環境が影響するストレス要因も点数として加算されます。

一見、ストレスが高そうなのにも関わらず自覚症状がなく、点数だけでは「高ストレス」認定がされない人を見落とさないために、ストレスチェックの実施者は包括的に判断をする力が求められます。

 

指導の推奨

ストレスチェック実施者は、ストレスチェックを受けた高ストレスの者で面接指導が必要な者を選定します。

面接指導は義務ではありません。したがって、本人の意向により拒否ができます。高ストレスであることを受け入れられない人や、ストレス状態を甘く考えてしまう人、あるいは指導を受けることで仕事に穴をあけてしまうという考えから、指導を受けない場合があります。

面接指導を受けることは恥ずかしいことでも、職場に迷惑をかけることでもないと周知がされていることが、ストレスチェックを活用できる重要なポイントとなるのです。

 

指導の実施

面接指導を受けたいと申し出があった従業員に、面接指導の機会を設けます。

ただ、先述のとおり、何らかの理由で面接指導を受けない従業員も出てくる可能性があります。そういった従業員をケアせずに就業させ続けることは、いずれ大きな事故や長期の休業・離職といった結果に繋がりかねません

面接指導はハードルが高いという高ストレス者のために、別途「相談窓口」を設けると有効です。相談窓口の設置は、社内で担当者を決める方法と、委託する方法とがあります。

委託する場合、どうしてもコスト発生のデメリットがありますが、社内の者に知られたくない話を相談できる安心感や適切な処置を保障できるというメリットがあります。

とくに心理的トラウマ経験をした高ストレス者の場合、何かの単語や表情といった「少しのこと」が引き金となり鬱や鬱に相当するようなさらなるメンタルヘルス不調に陥る可能性があります。社内から選出する場合は「追い打ち」にならないように細心の注意が必要です。

 社内で担当者を選出する場合、事前に厚生労働省が発表している「ストレスチェック制度における高ストレス者に対する適切な面談マニュアル」を読むようにしてください。

実践的な質疑応答の例文もありますので参考になるはずです。

厚生労働省「医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル」:

https://www.mhlw.go.jp/content/000843224.pdf

 

職場環境及の改善

高ストレス者はなりたくてなるものではありません。当然ながら該当者となってしまった背景には必ず払拭できる理由があります。

長時間労働やあらゆる面でのハラスメント、人事評価や労働環境設備などが適切であるかを再考しましょう

労働環境改善についてはこちらのコラムをお読みください

「働きやすい職場で人材の定着を目指す!職場環境改善を正しく遂行するポイント」

https://www.lifesupport-service.com/blog/20230120/

 

ストレスチェック制度導入における注意点

ストレス状態を放置していると、眩暈や頭痛、睡眠障害などさまざまな影響として体に出てきます。この数年はコロナの影響もあり、ストレス発散ができる機会も制限されていたため、ストレスチェックのチェックリストの結果で予想以上に自分がストレス状態であったことを知る人も少なくありません。

ストレスチェックは個人も企業も守るものですが、効力を発揮するには注意深く取り扱う必要があります。

ストレスチェック制度導入における注意点を押さえておきましょう。

 

プライバシーの保護

ストレスチェックでは労働者の健康状態が露わになります。個人情報が詰まっている状態ですので、取り扱いには十分すぎる注意を払ってください。

まず、ストレスチェックの実施者は労働安全衛生法により、ストレスチェック実施において知り得た労働者の情報を漏洩してはならないという守秘義務が課せられます。

ストレスチェックの結果は、労働者の同意がない限り事業者に提供してはならないことも抑えておきましょう。

簡単に言えば、上層部から特定の個人のチェック結果の提示を求められたとしても、その労働者の同意がない限り漏洩は守秘義務違反となるということです。

もちろん、情報漏洩に対する罰則もあります。

ストレスチェック実施者及び実施事務従事者が守秘義務に反した場合、罰則規定により6か月以下の懲役または50万円以下の罰則金が定められています

参考;中央労働災害防止協会「労働安全衛生法 第12章 罰則(第115条の3-第123条)」https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-1/hor1-1-1-12-0.htm

 

労働者に不利益とならないようにする

ストレスチェックの結果を元に、改善をするべきは労働環境です。ストレスチェックの結果や面談の結果、労働者に対する不当な配置転換や、評価を下げて能力に見合わない仕事させるといった措置は「環境改善」ではありません。

 

ストレスチェックの結果、労働者の心的状態が限界であったとしたら、改善の矛先は職場でありその労働者ではないと理解をしていることが、ストレスチェックを活かす最善策です。

 

報告書提出の義務

ストレスチェックと面接指導の実施状況について、所管の労働基準監督署に報告する義務があります。この報告義務を怠った場合、労働安全衛生法違反(労働安全衛生法第120条の5)で最大50万円の罰則金が課せられます

また、虚偽申請を行った場合も同様です。

ただし、常時使用する同労者が50人未満の事業場の場合、ストレスッチェックは努力義務であるため労働基準監督署への報告義務がありません。

 

 

 

メンタルヘルスケアにおける「3つの段階」

メンタルヘルスの不調はただ単にストレスを抱えた状態が続くわけではありません。

深刻な体調不良により、就業できなくなる場合もあります。

メンタルヘルスケアは、ストレスを溜めないように警戒するだけではなく、実際に不調となった後にもケアが必要です。

企業として労働者にストレスを溜めない、ストレスに気付く環境をが整えられるかが3つの段階別に求められます。

ここからは、メンタルヘルスにおける予防の段階を紹介します。

企業は従業員が何次予防の段階にいるかをよく観察し、従業員に適切な環境を与えてサポートすることが大切です。

一次予防

メンタルヘルスの不調を未然に防ぐ段階が一次予防です。
この段階では、ストレスマネジメントの研修や、ストレスチェック制度の導入などが該当します。

積極的にメンタルヘルスを良好に維持するプログラムに取り組み、労働者にセルフケアが行える環境をサポートします。

二次予防

メンタルヘルス不調の早期発見・早期治療が二次予防です。
メンタルヘルス専門医や産業医との提携や、相談窓口の開設などが該当します。

労働者と管理者が、メンタルヘルスを正しく認識できるように学ぶ機会を提供し、不調に気付いた労働者には相談できる環境を整えることが大切です。

三次予防

メンタルヘルス不調が理由で休職している労働者に対し、復職支援をすることが三次予防です。

メンタルヘルス不調の休職者は、少なからず不安や焦りを感じることが少なくありません。復職に向けて精神的なサポートは必須です。

休業から業務復帰までを制度化するなど、明確なルールを提示することで、労働者は焦らずに治療に専念することができます。

簡易版・セルフストレスチェック診断

あなたはストレスを抱えていませんか?

実際にストレスを抱えていたとしても、ストレス耐性が高いと心のSOSに気付かないこともあります。

実際に簡単なストレスチェックをしてみましょう。

以下の項目を読み、該当する内容が何個あるかカウントしてください。

ストレス度チェックリスト

□何となくボーっとする
□以前より眼精疲労がある
□鼻づまりがする
□息苦しくなり酸欠を感じる
□動悸がする
□胸が締め付けられる感覚がある
□めまいを感じるときがある
□立ちくらみしそうになる
□耳鳴りがすることがある
□口内炎ができる頻度が上がる
□のどに違和感がある
□舌が白くなっている
□よく風邪をひく
□手足が冷える
□手のひらやわきの下に汗をかきやすい
□胃腸の調子が悪い
□首・肩・肩甲骨が凝る
□背中や腰痛がある
□疲労感が取れない
□疲れやすい
□好物に対して食欲がわかない
□食後に胃もたれがある
□ダイエットではなく体重が減少する
□寝起きが悪い
□眠りが浅い
□以前より夢を見る
□夜中に何度も目が覚める
□就業中に集中力が欠ける
□少しのことでいらいらする
□人と会いたくない

0~5:正常値

ストレス状態は低く、上手くストレスと付き合えています。

 6~10:軽度ストレス状態

少しストレスを抱えているようです。少し休み、何もしない時間を取り入れましょう。

11~20:中度ストレス状態

ストレス度は高めです。一人で抱えず、誰かに相談することを検討しましょう。

21~30:重度ストレス状態

適切な治療と療養が必要な段階です。メンタルヘルスの専門家に相談しましょう。

ストレスとの向き合い方

日常生活を送る上で、全くノーストレスで生活するのはまず困難です。
ストレスを溜めないためには、うまくストレスと付き合っていく必要があります。

心を守るために、どのようにストレスと向き合っていくかを正しく認識することが大切です。

自分のストレスに気付く

自分の心身の状態を把握しておきましょう。普段よりも何か違ったことがないか、どんな状況下でストレスを感じやすいのかを熟知しておきます。

ストレスのサインは、不眠や胃腸の不調として身体に現れる場合、イライラや緊張感の持続として心理面に現れる場合、そして口調がきつくなったり飲酒が増えたりなど行動面に現れる場合があります。

また、ストレスを感じやすい環境は人によって違うため、どんな背景がストレスとなるのかを考えてみてください。職場の飲み会が楽しみな人もいれば、ストレスに感じる人もいます。同じコミュニケーションでも平気に感じる人もいれば、ストレスに感じる人も当然いるのです。

つまり何にストレスを感じるかは人それぞれです。たとえ誰かに相談して「そんなことくらいで?」と言われたとしても、ストレスと感じた自分を否定的に捉える必要はありません。

 ストレスケアをする

ストレスのサインを受け取ったら、対処をしていきます。

対処法も人それぞれです。ストレス要因に直面することで緩和するタイプもいれば、回避することでストレスから解放される人もいます。

どちらが正しいということではなく、自分に合った方法で対処してください。

たとえば、「仕事の締め切りがストレスだった」とします。ストレス要因に直面できる人はできるだけ早く仕事を片付けてしまうことがストレスから解放される方法です。

しかし、仕事そのものがストレスとなっているならば、配属を変えてもらうか仕事を手伝ってもらうかなど、具体的な対策が必要になります。

またストレスの要因となっていることを考えない時間も大切です。

趣味に打ち込む時間や、睡眠をしっかり取ること、そしてSNSから離れて情報を遮断することもストレスケアになります。

とくに質の高い睡眠は心身を健康に保つための基本行動です。夕食後はカフェイン接種を控え、ゆっくりと入浴して眠る体制を整えましょう。

心身のサインを見逃さない

ストレスの原因となっている事象に気付き、ストレスの度合いに合わせて適切な対処を行うことがメンタルヘルスを安定させる方法です。

自分自身の心身のサインを見逃さず、また家族・同僚・友人に「普段と違う」行動があればそのサインを受け取ることがメンタルヘルス不調の早期発見に繋がります。

また、会社員などの労働者だけでなく、小学生や中学生、高校生などの子供、受験生、大学生、子育て中の主婦、妊娠中の方など、誰しもがメンタルヘルス不調に陥る可能性があります。

ストレスのセルフケアとしてストレスチェックを定期的に行い、どんな状態にあるのか客観視しておきましょう。

また、企業はストレスチェックを行い、労働者のメンタルヘルスの不調を見逃さないための取り組みが必要です。

弊社では、企業様の健康経営を積極的にサポートしています。

健康診断の実施や健康経営についてなどのお悩みは、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。

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