放っておくと怖い睡眠不足!今こそ食事と生活習慣で解消しよう

パソコンの前で眠る女性

人生の1/3は睡眠と言われているように、人間は1日のうちに必ず睡眠をとります。しかし、日本人の睡眠時間は年々短くなっている事がわかっています。

 

正しい睡眠時間が確保できないと、仕事のパフォーマンスが下がるだけでなく体にも不調が出てしまいます。そうならない為にも、睡眠の質を高める食事と生活のポイントを管理栄養士が解説します。

日本人の睡眠の問題点

毎朝、「スッキリと起きる事ができた」という感覚はありますか?

 

日本人は世界一睡眠時間が短く、多くの大人は仕事の為に睡眠時間を削っているのが現状です。平成27年の国民・栄養調査では睡眠の確保の妨げとなっている要因として、男性は仕事、女性は育児、家事が上位に上がっています。

 

パフォーマンスをアップさせる睡眠の役割

眠っている間は副交感神経が優位になり、成長ホルモンが最も多く分泌されます。この間に傷ついた細胞の修復を行ったり、脂肪を分解させたり病気をもたらすウィルスの体内への侵入を防ぐ免疫力を高める働きもしてくれています。

 

睡眠の役割は、1日の活動で疲れた体や脳の疲れを休める事です。しかし、肉体的な疲労については多くの場合眠らなくても横になれば回復します。ここで重要なのは「脳」の疲れは眠らなければ回復しないという事です。

 

脳が働く時間と比例して睡眠促進物質という物が脳内に溜まって行きます。この物質が増えすぎると脳が疲れてしまうためこの物質の生産を止めなければなりません。そのため、分解するように脳の働きを止めて眠る必要があるのです。

 

1日にあった嫌な事や辛い事を眠って忘れるように、睡眠中には心の修復や記憶の整理が行われています。

 

昔行われた断眠の実験では、断眠2日目に目の焦点が定まらなくなり、4日目には幻覚を見る、記憶が欠落するなど、脳の機能の低下の異常がみられるようになりました。

 

成人男性の場合、脳の重さはわずか2%程ですが1日のエネルギー消費量の割合はおよそ18%もあります。脳は活発に働いている器官なので、正しく機能するためには毎日十分な睡眠が必要なのです。

 

このようなことから大切な試験や仕事の前に、最も確保したいのが「睡眠時間」といえますね。一夜漬けでは良い仕事の成果は生み出せないと覚えておきましょう。また、朝起きてから4時間後に眠気があったり、電車の中で居眠りをしてしまう場合は睡眠不足のサインです。

 

レム睡眠とノンレム睡眠

睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があります。入眠後すぐに訪れるのはノンレム睡眠で、物音がしても起きる事が無いほど熟睡しています。脳を休めているため心拍数も減り、体温も基礎代謝も下がり内臓も休みます。

 

ノンレム睡眠が1~2時間続いた後、睡眠は浅くなり5~10分程レム睡眠が現れ、再びノンレム睡眠へと移行します。この2つの睡眠周期は約90分の周期で繰り返し現れ、一晩に4~5回繰り返されます。

 

睡眠全体の中でも脳と体の両方をしっかりと休ませるためには入眠後の3時間に訪れるノンレム睡眠の時間にぐっすり眠る事が大切であるとされています。

 

体内時計の役割

私たちの体には「体内時計」という機能が備わっています。体はこの時計によって自立神経や体温や血圧、ホルモンなど、1日のあらゆる活動をコントロールしています。

 

日本人の体内時計は24時間10分と、1日24時間の地球のサイクルよりも長いために普通に生活するだけでも時差が生まれてしまいます。実際に、肥満、糖尿病、うつ病、不眠症などはこの体内時計との関係が大きいと言われています。

 

この体内時計を整える方法は、食事のパートで詳しくお伝えします。

 

理想の睡眠時間は人によって違う

理想的な睡眠時間はどのくらいが理想なのでしょうか?

 

一般的に、成人では6~8時間が目安とされています。1日のパフォーマンスを最大限に生かすには7時間の睡眠+日中の10~20分程度の仮眠を取る事が望ましいとされています。

 

しかしながら、体質や仕事、育児や家事などの条件は人によって異なるものです。10時間以上寝ないとダメなロングスリーパーの方もいれば、6時間以下の睡眠でも足りてしまうショートスリーパーの方もいます。そのため、毎日何時間睡眠を取るのが良いと断言する事はできません。

 

良い睡眠の目安は睡眠後の休養感(睡眠によって休養がとれている感覚)を意識しましょう。

睡眠不足が及ぼす身体への影響

実際に、睡眠不足が仕事や日常生活のパフォーマンスや身体にどのように影響を与えるのか見ていきましょう。

 

睡眠不足と肥満

睡眠不足と肥満には深い関係があります。7~8時間寝る人は肥満の割合が最も低く、睡眠時間が短くなるほど肥満率もアップします。睡眠時間が短いと満腹を知らせるホルモンであるレプチンが減り、空腹を感じるホルモンのグレリンが増加します。

 

つまり睡眠時間が短い人は食欲が増して太りやすい体になりやすいという事です。また、徹夜などで睡眠時間がいつもより短いと甘い物や塩気の強いもの、炭水化物を食べたくなる傾向にあります。睡眠不足の時にラーメンやケーキを食べたくなる事は自然な現象なのかもしれませんが、これが肥満に繋がる事は一目瞭然です。

 

自覚するのが難しい睡眠負債

日々の睡眠不足を解消できない場合、睡眠負債という心身へのダメージが蓄積されます。例えば毎日8時間の睡眠が必要な人が毎日6時間しか眠れていないと、2時間の睡眠が不足します。この積み重ねが睡眠負債を引き起こします。

 

一時的な睡眠不足は対策が立てられますが、睡眠不足を解消できないまま慢性化すると睡眠負債になります。睡眠負債になると倦怠感が取れにくく、認知や思考、感情のコントロール、意思の決定などの役割をしている前頭葉の働きが鈍くなり、判断力や集中力が落ちる事があるでしょう。これによりミスが増える、怒りっぽくなるなどの症状が表れます。

 

1回の徹夜が翌日以降の睡眠のリズムを乱し、睡眠負債になるきっかけを作る事もあります。また、週末に寝だめをすれば睡眠負債を無くす事ができるのではないかと考える方もいるかもしれませんが、2~3日たっぷり眠った位では睡眠負債は解消できないと考えられています。

 

その理由は、寝だめをする事でその日の起床時間が遅くなり、体内時計にズレが生じるためその日の寝つきが悪くなり、次の日に起きるのが辛いなど、良くない睡眠のループに陥ってしまうからです。

 

睡眠負債を解消したいと感じていても忙しくてなかなか早く寝る事ができないと感じている方は、本当にそれは夜にやらないといけない事なのか?を考えてみましょう。そして、〇時間寝るという目標を立てるよりもいつもより30分早く寝るという行動を1週間継続してみて下さい。

 

女性と睡眠の関係

女性の生理周期はエストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンに大きく影響します。その中で、排卵から月経直前まで分泌されるプロゲステロンの量が増えると眠気を感じやすくなります。また、妊娠する事によってこの2つの女性ホルモンが大量に分泌されるため、強い眠気を感じやすくなります。

 

睡眠不足の状態が続くと月経のある女性は特に貧血に悩まされるケースもあります。また、閉経の前後5年の約10年間は更年期と呼ばれ、女性ホルモンの分泌が不安定になる時期です。更年期障害に多い症状である「ホットフラッシュ」などの血管運動神経症状が重いと、深い睡眠が妨げられやすく、睡眠中に目が覚めやすいといった症状に悩む場合があります。

 

日常生活に支障が出る場合は、婦人科に相談するようにしましょう。

 

良い眠りをサポートする栄養の摂り方

睡眠と深い関係のある食事。良い眠りをサポートする食事についてみていきましょう。

 

朝ごはんで体内時計がリセットされる

先ほど説明したように、1日の中でズレが生じてしまう体内時計をリセットさせる方法は「太陽の光」と「朝ごはん」です。体内時計は親時計と呼ばれる脳内の時計と末梢時計と呼ばれる全身の細胞内にある2つの時計からできています。脳にある親時計は朝日で動き出し、全身の細胞にある末梢時計は朝ごはんを食べた時に目覚める仕組みで、この2つがセットになってやっと体内時計がリセットされるのです。

 

朝日を浴びる習慣と朝ご飯に何か口にする習慣を付けるだけでも、体のだるさが解消されるかもしれません。

 

カフェインやアルコールに注意

普段何気なく飲んでいる飲み物にも、睡眠の質を落とす可能性があります。アルコールが分解されるとアセトアルデヒドという物質が体内で作られる事によって交感神経が優位になり、睡眠を阻害して眠りを浅くしてしまいます。

 

カフェインには覚醒作用があり、飲んでから20~30分後に効果が表れ、そこから5~7時間の覚醒作用が続きます。カフェインの摂取量は1日400mg(コーヒーで700cc程度)を超えると夜間の睡眠に影響しやすいと言われています(1日のうち何時に飲んでも)。カフェインが多く含まれるコーヒーや紅茶は14時位までに楽しむようにし、夕方以降は控えるようにしましょう。

 

食事からトリプトファンを摂ろう

ハッピーホルモンとも呼ばれるセロトニンには、脳を目覚めさせる役割があります。さらには心をコントロールして平常心を保つ作用もあるのです。セロトニンは夜になると睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンに変わり、快眠効果を与えてくれます。

 

セロトニンの材料となるトリプトファンは体内で合成する事ができないため、食事から摂取する必要があります。トリプトファンは肉や魚、卵などタンパク質の原料となる食材に多く含まれており、トリプトファンは朝にたくさん摂ると夜の寝つきと朝の目覚めが良くなる事が知られています。

 

〈トリプトファンが多く含まれる食べ物〉

・牛乳、乳製品

・豆

・肉類

・アボカド

・タラコ 

 

〈朝食の例〉

朝食にパンを食べる方は、牛乳やチーズ、ヨーグルト、ベーコン、バナナなど、朝食がご飯の方は豆腐や納豆、油あげ、煮豆、味噌汁などをおかずにするとトリプトファンを摂る事ができます。

 

これまで朝食を摂る習慣が無かった方も、朝はバナナやヨーグルトからスタートしてみましょう。また、良く噛む事でもセロトニンの分泌を増やす事ができます。

 

睡眠の質を下げない夕食の摂り方

1日の終わりには、何かを頑張った爽快感が増してついついご褒美が欲しくなります。しかし、ここでアルコールやスイーツをお腹いっぱい食べてしまうと、夜に休ませたい腸や脳はカロリー消費に酷使されてしまいます。ここで睡眠の質が下がってしまうと、せっかくのご褒美も台無しになってしまいますね。基本的には就寝の3時間前までに夕食を食べ終わる事が理想です。

 

しかしながら寝る直前にお腹が空いていると覚醒を司る脳内物質のオレキシンを活性化させると言われているため、夕飯を早めに済ませてお腹が空いている場合や遅い時間に夕飯を食べる場合などは、消化に負担をかけないスープやヨーグルトなどの軽い食事にし、朝ごはんをしっかりと食べるようにしましょう。

 

夜勤中の間食のポイント

交代制などの勤務の場合、不眠や眠気、仕事効率の低下などの関連があるとされています。夜勤前や夜勤中に仮眠を取る事で夜勤中の眠気や仕事効率の低下に有効であると言う事が分かっていますので、静かで快適に休養できる場所を確保しましょう。

 

また、夜勤中に間食をする場合は胃に負担をかけ、栄養不足に陥る原因となる菓子パンやラーメンよりも、おにぎりや味噌汁などの消化に良い食べ物を選ぶようにしてみてはいかがでしょうか。

 

睡眠不足を解消する生活習慣

食事以外にも、睡眠の質を上げる方法をご紹介します。

 

日中はとにかく運動する

日中にしっかりと体を動かして体温を上げておくと、体内のセロトニンがストックされていくと言われています。運動はヨガやランニングなどの有酸素運動、ダンベルなどの無酸素運動など、方法は何でもokです。

 

そうは言っても、仕事が忙しくて運動している暇は無いという方もいますよね。そんな時は、昼間にできるだけ立つ、歩く機会を増やしましょう。

 

休憩時間にはできるだけ外に出てみるようにしましょう。室内の蛍光灯の明るさは500ルクス程度で、昼間の晴天太陽光は10万ルクス程度と、普段室内で過ごす方は自然の光の1/200程度しか浴びていない事になります。曇りの日でも3万2000ルクス程度の明るさがあるため、眠りに不調を感じているならば、外階段やオフィスの窓際へ行き、深呼吸する習慣をつけてみましょう。

 

日中に光を浴びて覚醒度を高める事はその日の夜の睡眠に良い影響を与えてくれます。夜の睡眠と昼の生活はお互いに影響を与え合っているのです。

 

入浴

入眠と体温には密接な関係があります。1日の中で深部体温が下がるのは夜の眠りにつく前で、深部体温が下がる時に良い眠りが生まれます。この深部体温をスムーズに下げる方法は入浴が効果的です。

 

いったん入浴で体温が上がると、上がった体温を下げようとする体の調節機能が働き、しばらくすると入浴によって上がった深部体温は入浴しない時の体温より低くなる事でスムーズな眠りへと導いてくれます。

 

寝る前にスマホは見ない

光は体内時計に大きく影響します。夜遅くまで明るい光の中にいるのが当たり前になった現代人は、睡眠のリズムを狂わせる要素が溢れています。スマホやパソコンの液晶画面から発せられるブルーライトは網膜の中心にある黄斑部にダメージを与えるだけでなく脳を覚醒させます。

 

スマホの場合、テレビやパソコンよりも目で見る距離が近いため、ブルーライトの影響が大きくなります。快眠の為にも仕事の気になるチャットやメールは朝に見るようにし、夜は気持ちを鎮め、ゆったりと過ごす時間にシフトしていきましょう。

 

まとめ

いかがでしたか?

 

睡眠不足に加え、よく眠れたと感じる感覚(睡眠休養感)を低下させる要因は食生活の乱れや仕事のストレス、運動不足、生活習慣病などが挙げられています。睡眠の質が下がると仕事のパフォーマンスが落ちる他に、免疫力の低下や低体温にも繋がる危険性があります。多忙な時こそ睡眠を最優先にし、睡眠環境や生活習慣の改善や嗜好品との付き合い方を見直してみる良い機会かもしれません。

 

体の健康と心の健康を守るためにも、睡眠休養感を高められるように努めて行きましょう。睡眠が変われば、きっと活力に満ちた日々を実感できるはずです。

 

社員の健康管理については、ライフサポートサービス株式会社までお問い合わせ下さい。

社員の健康管理はライフサポートサービス株式会社へご相談下さい。

お問い合せはこちらから


執筆者プロフィール~日比野 真里奈~
管理栄養士/健康運動指導士

生活習慣病になる人を減らしたいという思いから管理栄養士を目指す。
病院や高齢者福祉施設で栄養指導や栄養ケアマネジメントの経験を積み、現在は離乳食、食育、
生活習慣病予防、女性の健康の分野で食事から健康をサポートする仕事に従事している。2児の母。