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法定健診とは?一般健診との違いや項目を解説

法定健診とは、企業が従業員の健康を守るために法律で義務付けられた健康診断です。
その目的は、従業員の健康状態を適切に把握し、労働環境の改善や健康リスクの軽減を図ることにあります。
一方で、「一般健診」とは異なる位置づけがあるため、総務部の担当者はその違いを正確に理解しておく必要があります。
※このコラムでの「一般健診」とは主に個人で受診する健康診断のことです。
健康保険組合などで実施している「一般健診」とは異なりますのでご注意ください。
この記事では、「法定健診」と「一般健診」の違いをはじめ、法定項目の具体例や受診時のポイントについて詳しく解説していきます。
法定健診とは?
法定健診とは、労働安全衛生法に基づき、事業者が従業員の健康状態を確認するために実施が義務付けられている健康診断です。この法律の目的は、職場における健康リスクの早期発見と対策を講じ、従業員が安心して働ける環境を整備することにあります。
法定健診は、個人で受診する一般的な健康診断とは異なり、特定の項目が法律で定められています。たとえば、定期健康診断では身体測定や視力検査、血圧測定のほか、血液検査や胸部X線検査などが含まれています。一方で、一般健診は健康全般のチェックを目的としており、個人のニーズに応じて検査内容を選べるのが特徴です。
法定健診と一般健診の違い
「法定健診」と「一般健診」は目的や内容、対象者などで大きく異なります。ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。
目的の違い
法定健診
法定健診は、労働安全衛生法に基づき、事業者が従業員の健康状態を把握し、職場環境のリスク軽減を図るために義務付けられた健康診断です。 職場で発生する健康問題を予防し、従業員が安全に働ける環境を整えることを目的としています。
一般健診
一般健診は、個人が自身の健康状態を知り、必要に応じて早期治療や健康改善を行うことを目的とした健康診断です。
医療機関で任意で受けるものであり、主に生活習慣病や潜在的な疾患の早期発見が目的となります。
実施の義務
法定健診
法定健診は、すべての事業者に実施が義務付けられています。従業員が50人未満の事業所であっても例外ではありません。未実施の場合、企業には罰則が科される可能性があります。
一般健診
一般健診は法律で義務付けられておらず、個人の判断で受けるものです。
そのため、企業として実施する必要はありませんが、福利厚生の一環として導入する企業も増えています。
検査内容の違い
法定健診の項目
法定健診では、法律で規定された必須の検査項目が含まれます。
以下は主な例です。
- 身体測定(身長、体重、BMIなど)
- 視力・聴力検査
- 血圧測定
- 胸部X線検査
- 心電図検査
- 血液検査(貧血、脂質、肝機能、血糖など)
- 尿検査
- 問診
一般健診の項目
一般健診は、基本的な検査に加え、オプションでさまざまな検査を追加できます。
たとえば、胃部レントゲン(バリウム)検査、便潜血検査、腫瘍マーカ検査などが挙げられます。
対象者の違い
法定健診
定期健康診断は常時使用する従業員が対象です。
ただし、雇用契約の期間や所定労働時間により免除される場合もあります。
新たに雇用された従業員や特定業務に従事する従業員、また海外派遣される労働者などには、勤務形態に応じて適切な法定健診を実施する必要があります。
一般健診
個人の健康維持を目的とするため、特定の対象者はなく、自主的に受診します。
コストと運用面での違い
法定健診
法定健診の費用は、原則として事業者が全額負担します。また、健診結果の管理や従業員へのフォローアップも企業の責任です。
一般健診
一般健診の費用は、通常個人が負担します。
企業が福利厚生として一部を負担する場合もありますが、実施の義務がないため企業の負担は軽いといえます。
法定健診の主な種類
法定健診には、従業員の勤務形態や業務内容に応じていくつかの種類があります。 それぞれの目的や実施タイミング、対象者について理解することで、適切に対応することが可能になります。
以下では、主要な3つの法定健診について詳しく解説します。
雇入れ時健康診断
雇入れ時健康診断は、新たに雇用された従業員を対象に行う健康診断です。 事業者は、従業員が業務を開始する前に健康状態を把握し、業務への適性を確認する必要があります。
業務開始前に実施する必要があり、従業員が安全に業務に従事できる環境を整えるための重要なステップです。
雇入れ時健康診断の目的
従業員が就業する際の健康リスクを評価し、職場環境への適応を確保すること。
雇入れ時健康診断の検査項目
- 身体測定(身長、体重、BMIなど)
- 視力・聴力検査
- 血圧測定
- 胸部X線検査
- 心電図検査
- 血液検査(貧血、脂質、肝機能、血糖など)
定期健康診断
定期健康診断とは、常時雇用される従業員を対象に年1回の頻度で実施する健康診断です。
毎年決まった時期に実施することで、従業員の健康状態の変化を一貫してモニタリングできます。
定期健康診断の目的
定期的に健康状態を確認することで、業務中の健康リスクを早期に発見し、予防につなげること。
定期健康診断の検査項目
雇入れ時健康診断とほぼ同様の項目です。
特殊健康診断
特殊健康診断は、特定の業務に従事する従業員を対象に行う健康診断です。
主に、リスクの高い業務や特殊な環境で働く従業員が対象となります。
特定の業務に従事する前、または定期的に実施することが求められます。
特殊健康診断の対象となる業務例
- 粉塵作業
- 有機溶剤を扱う作業
- 放射線を扱う作業
特殊健康診断の検査項目
業務に応じた追加の検査が必要です。たとえば、粉塵作業では呼吸機能検査や特殊なX線検査が含まれることがあります。
法定健診に関するよくある疑問
法定健診について、総務部の健康管理担当者が抱える疑問は多岐にわたります。 ここでは、よくある疑問を取り上げ、それに対する解説を行います。
Q1.法定健診と人間ドックはどう違うの?
法定健診
法定健診は、労働安全衛生法に基づき事業者が実施を義務付けられた健康診断です。
従業員の健康を維持し、労働環境のリスクを軽減することが主な目的です。
検査内容は法律で定められており、基本的な項目を中心に構成されています。
人間ドック
一方で人間ドックは、個人が自主的に受ける健康診断で、全身の詳細な健康状態を調べることを目的としています。
法定健診には含まれない精密な検査(例:内視鏡検査や超音波検査など)が追加される場合が多く、主に生活習慣病や早期疾患の発見に焦点を当てています。
Q2.法定項目以外の検査を追加することは可能?
企業によっては、法定健診の実施に加えて、任意で検査項目を追加するケースもあります。以下が主な追加検査の例です。
- 腫瘍マーカー検査
- 胃部レントゲン(バリウム)検査
- 便潜血検査
- 超音波検査(腹部・甲状腺など)
- 婦人科系の検査(乳腺・子宮など)
ただし、これらの追加検査の費用については、企業が全額負担するのか、従業員と分担するのかを事前に決定しておく必要があります。従業員の負担が増える場合は、事前に十分な説明を行うことが重要です。また、多くの健康保険組合では指定の検査項目を追加すると補助金などが出る場合もあります。
Q3.健診結果の管理やフォローアップは誰が行うの?
健診結果の管理とフォローアップは、事業者の責任範囲内にあります。主なポイントは以下の通りです。
結果の管理
受診後、健診結果を適切に管理し、従業員の健康状態を記録する必要があります。
個人情報保護の観点から、結果の取り扱いには十分な注意が必要です。
フォローアップ
異常が見つかった場合、該当する従業員に追加検査や専門医への受診を促すことが求められます。
フォローアップ体制を整えることで、従業員の健康維持につながります。
Q4.健診の手配や実施が手間に感じます。効率化する方法は?
法定健診の手配や実施は、従業員数が多い場合や複数拠点を持つ企業では特に負担となります。
効率化のためには、次の方法を検討してください。
巡回健診サービスを活用する
巡回健診・健康支援サービスのような専門サービスを利用することで、健診車が直接職場に訪問し、従業員が移動せずに健診を受けることが可能です。 これにより、手間やコストの削減が期待できます。
オンライン予約システムの導入
従業員が自身で健診日時を予約できるシステムを導入することで、スムーズなスケジュール管理が可能になります。
健診データのデジタル化
健診結果を電子データとして一元管理することで、総務部の管理業務が効率化されます。
まとめ
法定健診は、企業が従業員の健康を守り、労働環境の安全性を高めるために法律で義務付けられた重要な健康診断です。法定健診の目的や種類、一般健診との違いについて理解を深めることは、総務部の健康管理担当者にとって必要不可欠です。
法定健診は、労働安全衛生法に基づいて実施が義務付けられ、特定の検査項目が定められています。一方、一般健診は個人の健康維持を目的とし、法定健診には含まれない検査項目を追加できる自由度があります。
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